2016年05月01日

原発事故5年目の記録 「無人の町」にすむ野生動物たち

BS1スペシャル「原発事故5年目の記録」をみる。
後編では「無人の町はいま」として、
ひとがすまなくなった町で、
野生動物がふえている状況が紹介された。
除染がすすみ、これまですむのが禁止されていた地域へも、
すんでいたひとがもどれるようになりつつある。
しかし、ひとがるすをしていた5年のあいだに、
野生動物は町にたつ家でくらすようになっていた。
雨風をしのげる人間の家は、動物たちにとってもまた
すみかとして都合がいい場所だ。
自分のすんでいた家で、ひさしぶりに1泊できるようになり、
たのしみにしていたご夫婦は、
あまりにも動物くさくて、とまるのをあきらめられた。
ねずみが部屋にすみつき、なんどかたづけてもあらされる。
天井には黒いシミができており、糞尿のにおいがたちこめる。
屋根うらでくらすハクビシンたちが原因だ。

わたしは、野生動物がすんでいる土地にはいりこみ、
めちゃくちゃに開発する人間たちを わるものと とらえがちだ
(『平成狸合戦ぽんぽこ』をみよ)。
しかし、ひとがすまなくなった町に 堂々とくらすイノシシは
これまでにみたことのないおそろしい風景だった。
町がだんだんと自然にのみこまれていく。
彼らはまさしく野生動物であり、
とてもひとと動物たちが いっしょにくらせるとはおもえない。

人間のあやまちで放射能汚染がひろがり、
動物たちの天国(放射能汚染があるけど)となった土地を、
わたしは人間へのいましめとして
うけいれなければ、とおもっていた。
自分たちですめなくしておいて、
野生動物がはびこるとあわてるなんて、
あまりにも身勝手だから。
でも、「無人の町はいま」をみると、
ふるさとにもどろうとするひとの気もちも またよくわかる。
野生動物との共存などといえば、
きれいなはなしにきこえるけれど、
じっさいに自分がその状況にたたされたら
とてもおだやかな気もちで 野生動物をうけいれられそうにない。

原発事故によってくずれた ひとと野生動物との境界線が
これからどうなるのか、という問題を 番組はつきつける。
日本全国で、野生動物の農作物への被害がでているけれど、
原発事故で無人の町となった土地は、状況がまるでちがう。
5年のあいだに、動物たちはひとをおそれなくなった。
いまや町でくらすのが、動物たちにとって あたりまえであり、
いったん動物たちにあけわたした土地を、
除染がおわったからでていけというのは、
動物たちにつうじない。
イノシシのほかにも、サルやキツネなど、
おおくの動物が町にすみついている。
除染さえすめば、もとにもどれるとおもっていたのに、
「無人の町」となった5年間は、さまざまな問題をうみだしていた。
野生動物との境界線を、人間はひきなおせるだろうか。

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posted by カルピス at 22:53 | Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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