2016年05月13日

『ぼくの道具』(石川直樹)

『ぼくの道具』(石川直樹・平凡社)

しりあいが だいじなわすれものをしていたみたいに
あわててこの本をとりだして、わかれぎわにかしてくれた。
ふだんは、できるだけ図書館かネットの古本で
よみたい本をさがすひとなのに、
この本は、かってでも手にいれたかったそうだ。
冒険家として、石川氏の名前だけはしっていた。
アウトドア関係の小物にわたしはよわく、
こんな本をよんで、あれもこれもほしくなったらこまるなーと、
たのしみとともに、すこし心配しながらページをめくる。

ヒマラヤや極地などのきびしい環境では
ふだんつかっている道具がやくにたたなくなる。
通信が一切途絶えても、本来はそれが当たり前なんだ、と気構える。大切なのは、道具に頼らず、まずは自分自身をその環境に適応させていく努力をすることだ。

なんて ただしいかんがえ方がのべられており、
「まえがき」をよむと いかにも専門家ふうで 敷居がたかい。
その筋のプロフェッショナルが、
しろうと相手に おたかくとまられてはたのしくない。
たかくて手にはいらない道具を絶賛されてもしらけるし。

でも、よみはじめると、
石川氏は、あんがいかたぐるしいひとではないみたいだ。
「道具に対する固定観念は一度捨てたほうがいい」と、
コットンのパーカーをきていたシェルパを肯定している。
たいていの本では、山でコットンをさけるよう強調し、
化繊の下着とフリース、それにダウン製品ばかりとりあげがちだ。
ここちよくすごせるのであれば、
危険な場面でないかぎり、コットンでもいいというのは、
いえそうで、いえない。
おなじかんがえから、登山でのジーンズもありだという。

道具についてかたると、
おもいいれがあればあるほど、
自慢めいたはなしになりそうなところを、
この本は、しろうとでもいいそうなことを、
ひねらずに そのままかいてあるのでしたしみやすい。
道具によっては、アウトドアの入門書みたいだ。

いちにちの活動をおえて自分のテントにもどり、
ねるまえにDVDをみるのがとてもたのしいともある。
キンドルも山にもっていっており、
K2で『ナニワ金融道』を全巻よみとおしたそうだ。
こういうところは、いかにもいまどきの冒険家で、
いいとおもうことは柔軟にとりいれている。
DVDで精神衛生をたもち、本をキンドルにして 荷物をへらす。

けっきょくこの本で紹介されている道具は、
専門的すぎて、わたしの物欲を刺激しなかった。
わたしの場合、旅行でつかう程度なのだから、
極地仕様はさすがにおおげさすぎる。
ノースフェイスのダウンスーツなんて、
いかにもたかそうなので、
ほしくならなくてよかった。
たかすぎる道具には関心がむかわないように、
ケチで貧乏な性分が しみついているのかもしれない。

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posted by カルピス at 23:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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