仕事が一段落ついたところで、
スマホがまだ通話ちゅうの状態なのに気づく。
70分のあいだ、はなしつづけていたことになる。
イオンモバイルの通話料は、30秒あたり20円なので、
70分は2800円だ。
まえによんだ短編小説で、男にすてられた女性が
電話をつかってしかえしするはなしがのっていた。
海外の天気予報だか時刻のおしらせだかに
あいての部屋から電話をかけ、
つながったところで 受話器をそっと机のうえにおく。
ながい出張から男がもどったときには、
おそろしい金額の通話料になっている、という復讐だ。
むかしのはなしだから、外国への通話料はたかかったろうし、
それが何日分にもなると かんがえただけでもおそろしい。
男がいくら電話会社にいいわけしても みとめられないだろうし。
わたしが70分の通話に気づいたとき、
このはなしをすぐにおもいだした。
それにくらべれば、2800円なんてたかがしれている。
たかがしれているけど、わたしはケチで貧乏だから、
なかなか気もちをきりかえられない。
ふだんは、1ヶ月に500円ほどしか通話しないわたしが、
不注意から70分もはなしつづけていたとみなされるなんて、
なんどおもいかえしてもくやしい。
生きていると、こうした おもいがけない出来事が
いたるところにころがっている。
自動車を運転しているときに事故をおこせば、
いろんなややこしい状況になり お金がかかる。
仕事でちょっとしたミスをすれば 職場に迷惑がかかる。
健康をくずすと、医療費が必要になるし、
家族になにかあっても いつもとはちがうお金がでていってしまう。
つなわたりみたいに あぶないところを
気づかないうち まいにちやりすごしている。
わたしの70分通話なんて、ほんのささいな不幸にすぎない。
そういいきかそうとしても、ついなんどもおもいだして
しみじみとかなしみにくれた。
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