2017年01月07日

『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』

『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
(アキ=カウリスマキ:監督・1989年・フィンランド)

ウィキペディアによると、レニングラード・カウボーイズは、
カウリスマキ監督がでっちあげたバンドとなっている。
べつの名前で活動していたフィンランドのバンドが
映画が有名になったあとで
「レニングラード・カウボーイズ」をなのり、いまも実存するらしい。
バンドのトレードマークは、冗談みたいに(冗談なのだろう)
ながいリーゼントヘアーと、極端にながくとがったクツだ。
黒のスーツできめた8人が、全員おなじヘアスタイルなので、
いったいなんの記号なのかと はじめのうちはとまどった。
彼らは、仲間があつまってできたバンドではなく、
どうも おなじ血族でないと メンバーになれないようだ。
アーミッシュが黒い服と のばしたヒゲをまもるように、
リーゼントと とがったクツにより
「レニングラード・カウボーイズ」となる。
映画のなかで なんの説明もされないので、
ほんとうのところは よくわからない。

映画の冒頭は、シベリアの畑にたつ作業所みたいな小屋で、
レニングラード・カウボーイズがオーディションをうけている。
外見は奇抜でも、演奏するのはふるい民族音楽で
いかにもはやりそうにない。
ロシアではうけないので、アメリカへいったら、と
音楽プロデューサーにすすめられ、一行はニューヨークへむかう。
でも、彼らのふるくさいスタイルがアメリカで通用するはずもなく、
プロデューサーにダメをだされて
こんどはメキシコゆきをすすめられる。
一種のロードムービーで、メキシコへ移動するあいだのできごとが
そのまま作品になっている。
パブやレストランでアルバイトの演奏をしてこづかいをかせぐ。
客のもとめるがままに、ロックやウェスタンにきりかえるから、
基本的に器用なバンドなのだろう。

音楽もののコメディとしては、
このまえみた『ブルース・ブラザース』のほうが
わたしにはしっくりきたけど、
まったく雰囲気がちがう作品なのに、
バンドメンバーの底にながれる魂が
2作品とも なんとなくにている。
不自由な生活をおくりながら 演奏への熱意はいつまでもたもたれる。
ブルースに生きるひとたちなのだ。
理屈ぬきにはなしがすすむのもいっしょで、
なんでリーゼントなのか、なんでとがったクツなのかは
さいごまでしらされない。
ジム・ジャームッシュの世界を、
コメディにしたような作品といえば
雰囲気をわかってもらえるだろうか。

からだがカチンカチンにこおりつき、棺桶にいれられたメンバーは、
リーゼントと とがったクツのさきをだすために、
棺桶のフタの3ヶ所に穴があけられている。
車を運転するメンバーは、アクセルをふみやすいように
クツのさきをそりかえしてクギでうちつける。
そんなことをするのなら、クツをぬげばよさそうだけど、
作品のリアリティはクツをぬがないことでまもられている。
みおわったあとでも、
いったいこの作品はなんだったのかと不思議におもう。
こんな不可解な作品がつくられ、
おおくのひとにうけいれられる世界をよろこびたい。

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posted by カルピス at 14:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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