2017年01月10日

わたしがよみたい書評

綿矢りさ氏と金原ひとみ氏について、
なにかかいてないかと書評集をひっぱりだす。
北上次郎氏と大森望氏による、対談形式の書評だ。
「SIGHT」誌に連載された対談を本にまとめたもので、
『読むのが怖い!』シリーズとして、
これまで3冊が出版されている。
編集部と、北上氏・大森氏が、
それぞれ数冊ずつ課題図書をだしあい、
対談として よんできた本の感想をはなしあう。
これまでなんどか目をとおしているのに、
よみだすと またおもしろい。
さがしている記事がみつからないので、
ページをめくるうちに かなりの量をよみなおした。

そのうちに、わたしがよみたいのは こういう書評なのだと気づく。
本についてかいてあれば なんでもいいわけではなく、
あらすじの紹介や、レベルのひくい感想では満足できない。
これまでに本をたくさんよんできたひとが
自分のこのみをはっきりうちだした書評がすきだ。

すきな作家が 本を話題にかいた文章もこのんでよむ。
その文章じたいをたのしめるし、紹介された本もよんでみたくなる。
影響をうけているせいか、このみがよくにており、
本の選択を信頼できる。
たとえば、村上春樹さんが紹介する本なら、
かなりの確率でわたしはよもうとするだろう。

斎藤美奈子氏のデビュー作、『妊娠小説』がわたしはだいすきで、
この本によって、評論のおもしろさをはじめてしる。
『妊娠小説』は、貧乏や病気をとりあげた小説
(貧乏小説・病気小説というジャンルができている)のように、
妊娠もまたひとつのおおきなカテゴリーであると「発見」した。
妊娠が話題となっている本はたくさんあるのに、
斎藤氏が発見するまでは、
そんなカテゴリーがあるのを だれも気づかなかった。
『太陽の季節』も『風の歌を聴け』も、
『暗室』(吉行淳之介)も『テニスボーイの憂鬱』(村上龍)も、
ある角度からみれば、みーんな妊娠小説で、
作者の意図からはなれ、妊娠に焦点をさだめると、
男のいいかげんさがあぶりだされる。

『妊娠小説』をよんでいるときのたのしさ、
よみおえたあとの満足感を
いまでもわたしはおぼえている。
あの刺激を またあじわいたいけれど、
なかなかそれだけの本(ひと)にであえない。
本のおもしろさをおしえてくれる本がよみたい。

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posted by カルピス at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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