南北戦争がおわったばかりのワイオミング州が舞台。
猛吹雪がおそってきたため、街道ぞいの店に避難した旅人8人が、
おたがいの腹をさぐりあいながら いっときをすごす。
旅人のうちひとりは賞金かせぎで、
獲物である女性の盗賊をつれている。
盗賊のなかまが彼女をうばいかえしにくるだろうと警戒しながら
だれが敵かわからない小屋で吹雪がやむのをまつ。
南北戦争がおわったばかり、という時代設定も
はなしをややこしくしている。
もと北軍の少佐と南軍の将軍がまじっており、
そんなふたりが すんなりなかよくすごせるわけがない。
また、銃がいまよりもずっとかんたんにつかわれていた時代であり、
必要ならば ためらわずバンバン銃がうたれる。
もと北軍の少佐をえんじているのがサミュエル=J=ジャクソン。
あいてをにらむギョロ目と、特徴のある彼の声をきいていると、
『パルプ・フィクション』での聖書の朗読がおもいだされる。
あのときのジュールスのように、
この作品でも かんたんにひきがねがひかれる。
猛吹雪をやりすごす、という設定だけに、
外も 小屋のなかも、ものすごくさむそうだ。
でも、どんな吹雪であろうとも、馬にエサと水をあたえ、
ゆっくりやすませないと そのさきの旅をつづけられない。
吹雪におわれ、ようやく馬車で店にたどりついた一行が、
馬の世話をおろそかにしないのがリアルだった。
こういうシーンに手をぬかない作品がわたしはすきだ。
小屋にたどりついた一行は、
あたたかいコーヒーをのんでひといきつく。
つくりおきのシチューもあった。
これがまたまずそうなシチューで、
さむい小屋なのに お皿によそったとき 湯気もたたない。
コーヒーとシチューは、小道具として あとでいきてくる。
密室で、腹をさぐりあい、どんどんころされていくのは
タランティーノのデビュー作、『レザボア・ドッグス』みたいだ。
ひとことで乱暴にいうと、『レザボア・ドッグス』を
もっと複雑かつゴージャスにしたが『ヘイトフル・エイト』だ。
上映時間は167分。ながすぎるというレビューを目にしたけど、
わたしはみているときにまったくながさが気にならなかった。
演技をみているというよりも、タランティーノ作品らしく
なにげない日常のおしゃべりを 耳にしている気がするからではないか。
タランティーノがすきなわたしは、
独特のいかれた世界にどっぷりとひたり 満足した。
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