2017年03月06日

しょぼいお店が町にあるしあわせ

デイリーポータルZに、ものすごい量のテンプラをのせた
「もりあわせ丼」をだすお店が紹介されていた。
http://portal.nifty.com/kiji/170306198962_1.htm
テンプラがやまもりになっていて、
もちろんごはんはみえない。
それでいて550円だから、こんなお店が近所にあれば、
人生におけるしあわせが 3割ましになるよう、
保障されたようなものだ。
ほかのメニューだって「わかめうどん(そばも)」350円など、
どれもすてきにやすい。
天かすがとりほうだい、おろししょうがもいれほうだい、
インスタントみそ汁を自分でつくるなど、
お客さんに ここちよくすごしてもらいたい、という姿勢がすばらしい。

このお店の記事をよみながら、
わたしは、まったくべつのタイプのお店をおもいだした。
中学・高校のときお世話になったちいさな食堂で、
1階が大判焼をつくるスペースと、ささやかな厨房になっており、
2階が客席だ。
客席といってもテーブルが3つくらいの すごくせまい部屋でしかない。
2階からうどんやかき氷を注文すると、1階でつくって
おばさんがせまい階段から 2階にはこんでくれる。
何種類もいっぺんに注文すると、
かなりの確率でまちがった料理がはこばれてきた。
ブツブツいいながらも わたしたちは
注文していないべつの品をたべた。
かき氷とうどん、それにラーメンくらいしかメニューになく、
でもかき氷はやすいイチゴからゴーカな宇治金時まで、
サイフにあわせてえらべるようになっている。
どれもやまもりなので、たべおわるころは
首のうしろや頭がいたくなったものだ。
クーラーがききすぎていて、
かき氷をたべたらつぎにうどんがほしくなる。

いまおもうと、わたしはあの店にそだてられたのではないか。
お店のおじさん・おばさんは、ぜんぜんあいそがよくないし、
中高生をかわいがるひとでもなかったけど、
しんどい練習のあと 仲間とたちよる場所があるのはありがたかった。
なにもしらなかった おろかなわたしは、
こうしたお店の価値を正当に評価できなかったものの、
へんてこで、しょぼいものへのこのみは、
無意識のうちにわたしのからだにしみついていった。
すべては幼稚園の砂場でまなんだ、みたいな本があるけど、
いまおもえば、わたしの場合もこれにちかい。
仲間とのつきあいかた、ひまのつぶし方、注文の仕方など、
おおくの社交術を わたしはあの店で身につけた
(だからわたしはいまだにケチくさい注文しかできない)。

ずいぶんあとになって、しりあいに
「おいしいラーメン屋さんをしらない?」
とたずねたら、なぜかこのお店をすすめられた。
わたしの記憶では、けしておいしいラーメンをだす店ではなかった。
おとなになってからも支持するなんて、きっとわたしのしりあいも、
このお店にそだたられたとおもっているクチではないか。
なつかしさから、記憶を事実とはちがう方向へ かきかえている。
残念ながら、このお店は わたしが30代のころにつぶれてしまった。
生まれそだった町に、あのような店があるしあわせを、
お店がなくなってから しみじみとかんじた。

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posted by カルピス at 22:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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