「サギにあったみたい」と封筒をもって台所にきた。
たくさんの書類がはいっており、
すぐにはなんのことかわからなかったけど、
どうも高額医療費の返還がうけられるからと、
ゆうちょの口座をつくるようにいわれ、
もとめられるままに口座番号や暗証番号をつたえたらしい。
書類のなかには、ゆうちょダイレクトのもうしこみが完了しました、
というおしらせがあった。
口座には、60万円ほどの普通預金があり、
そのほかに定期預金も もっていかれたかもしれないという。
被害金額としては、致命的でないとしても、
だれかがまんまと金をうけとって、
にんまりしているかとおもうとはらがたつ。
母は、よくいえば善意のひとで、
だれかをうたがったりせず、
いわれるままに相手のはなしに共感しがちだ。
サギにかかったら一発だろうと、まえから気にかかっていたけど、
なにも対策をとってこなかった。
85歳になる母は、「だいぶボケてきた」といいながら、
身のまわりのそうじや洗濯は自分でするし、
ひとりで病院へもいける。
サギにそなえるといっても、へんなはなしにはのらないよう、
漠然とした注意ぐらいしか わたしにはできない。
あやしいはなしは固定電話にはいってくるので、
携帯電話だけをもつようにすすめようか、とか
通帳をぜんぶわたしがあずかったほうがいいか、など
これからの対応をかんがえる。
はじめは だまされた母のおろかさにいかりながら、
だんだん母がかわいそうになってきた。
わたしがろくにはなしをきかないので、
へんな電話がかかってきたと、相談をもちかけにくかったのだろう。
むすこといっしょにくらしながら、サギの被害にあうなんて、
せめられるのは、母でははなく むすこのわたしだ。
とにかく郵便局へいって 相談にのってもらうよう母にいう。
「わたしがわるい」といいながら、自分はうごかずに
こうやってぜんぶ母にさせるのだから、
たしかにわたしは よくないむすこにちがいない。
仕事からもどり、郵便局でどういわれたかを母にたずねる。
さいわい 事前にくいとめられて、被害はなかったそうだ。
ゆうちょダイレクトを廃止する手つづきをしてもどってきた。
たくさんあった連絡物は、ぜんぶ郵便局へあずけている。
ひとまず問題は解決し、いい体験になったとありがたくおもう。
でも、やり手のサギにかかったら、
母なんて なんどでも だまされるにきまっている。
サギ被害を根本的にふせぐ、なにかいい方法をしりたい。
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