ベトナムのホイアンにあるお店がとりあげられた。
ホイアンへは、わたしもいったことがある。
ベトナムの中部にあるちいさな町だ。
ちかくには、ベトナム戦争のときに
米軍の基地があった都市として有名なダナンがある。
ホイアンは、1999年にユネスコ世界文化遺産に登録されており、
それ以来おとずれるひとが10倍以上にふえたそうだ。
わたしがおとずれたのは2014年であり、
しずかな田舎町を想像していたけど、
観光客でいっぱいだった。
もうすこしはやくいっていれば、
むかしながらのしずかなホイアンをみられたのだろう。
有名な日本橋も、屋根つきの橋としてめずらしいけど、
いちどみれば、それでもうじゅうぶんだ。
ふつうの町は、旧市街が開発からとりのこされた
さみしい地域になり、
新市街にあたらしく活気のあるまちなみが発達する。
でも、ホイアンの場合は、旧市街に観光名所があつまっており、
ひとびとは、新市街にすみ、旧市街へかようかたちがおおいらしい。
番組がとりあげたお店は新市街にある。
新市街といっても、旧市街にくらべてあたらしいという意味で、
じゅうぶんごちゃごちゃしてるし、ふるめかしくもある。
そのお店に、毎晩たくさんのお客がやってくる。
番組が紹介するほかの「入りにくい」居酒屋は、
名物料理や郷土料理を大切にしているなど、
はっきりした特徴があるけど、
ホイアンのお店「MC」は、気のいいご夫婦がやっている、
ごくふつうの食堂だ。
きっと、ホイアンのひとには「ごくふつう」に意味があるのだろう。
年配のお客さんは、だれもがベトナム戦争の体験をかたっていた。
さいごに自分をうけいれてくれるのは、ふるさとしかないのだという。
わかいひとたちも、大都会のホーチミンではおちつけず、
けっきょくまたホイアンにかえってきた、といっていた。
以前はこの番組をみると、とりあげられたお店に
なんとかしていってみたいとおもっていたけど、
ホイアンのお店をみたら、そうでもないかと気がかわった。
お店に魅力がなかった、というのではなく、
わたしが旅行でたずねた町にも
「入りにくい居酒屋」があったことに満足したのだ。
いこうとおもえばいけたお店だとおもうと、
残念というよりも、だったら どこのお店でもいっしょかも、
という気がしてきた。
もし番組がわたしのすむ町の、どこかのお店をとりあげたら、
よろこんでかようようになるかというと、
きっとそうはならない。
番組がとりあげる店を、「いいな〜」と
かるくおもうだけでじゅうぶんなわけで、
なにがなんでも番組が紹介されたお店を
さがしだすのはヤボというものだ。
自分がなじんだ町の、ときどきおとずれる店こそが、
自分にとっての「入りにくい居酒屋」である。
青い鳥はすぐちかくにいるのだ。
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