(ジョン=バダム:監督・1977年・アメリカ)
いまさらながら『サタデー・ナイト・フィーバー』。
わたしは、自分がおどれないヒガミから、
この作品をずっと敬遠してきたけれど、よくできた青春映画だ。
チャラい作品だろうときめつけずに、
もっとはやく、高校生のときにみておけばよかった。
トニー(トラボルタ)はペンキ屋につとめる19歳のわかもの。
週末にディスコでおどるのをたのしみに、
両親・祖母と同居している。
家族や職場にすごく反発しているかというと、
そういうわけでもなく、
たくみなダンス以外はごくふつうの青年だ。
仲間とつるんでさわぐにしても、
ほかのメンバーをどちらかといえばいさめる役で、
ふかい教養はないにしても、独自のかんがえをもっている。
わたしがきめつけていたような、頭からっぽのチンピラではなくて、
自分の生きかたをさがしはじめている、
しっかりしたわかものとして好感がもてた。
『サタデー・ナイト・フィーバー』といえば
ディスコでのダンスが有名だけど、
いまみると、そんなにハデなうごきはなく、
行儀のいいフォークダンスみたいだ。
ラストのダンスコンテストでも、
おとなしいふりつけに終始している。
トニーは、あきらかに自分たちのコンビよりも
うまくおどったカップルに賞金をゆずったり、
町をでてひとりぐらしをはじめたいと、
すきな女の子にうちあけたりと、すごくまともなわかものだ。
トニーにおもいをよせる女の子、アネットがかわいい。
トニーがふりむいてくれるよう、背のびしがちな彼女を、
トニーはやんわりと自分の道をすすむようにさとす。
トラボルタというと、どうしても
『パルプ・フィクション』のダンスをおもいだす。
むりやりにステージにひっぱりだされ、
じゃ、ま、ちょっとやってみるかと、
しぶしぶはじめたツイストが余裕たっぷりだった。
おどれない役者が練習をかさねてたどりついたダンスではなく、
1000ぐらいひきだしをもっている名人が、
そのなかのひとつから さりげなくひっぱりだして
かるく披露してみました、というかんじ。
『サタデー・ナイト・フィーバー』とくらべ、
トラボルタにはたっぷり肉がついてしまったけど、
その分、成熟したダンスとなり、
さきをいそぎたがるユマ=サーマンを、余裕でリードしていた。
『サタデー・ナイト・フィーバー』があっての
『パルプ・フィクション』であり、
タランティーノ監督が、
じょうずにトラボルタをいかした作品なのがよくわかった。
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