(アンリ=ヴェルヌイユ:監督・1963年・フランス)
いまさらながらだけど、
はじめて『地下室のメロディー』をみる。
圧倒的におもしろい。
ゴージャスな音楽にのって、
テンポよくストーリーがすすむ。
色気なし。
はでなアクションやカーチェイスもない。
純粋に、ハラハラ・ドキドキだけでひっぱる、
サイコーにいかした作品だ。
以下、ネタバレあり。
5年のつとめをおえ、シャルル(ジャン=ギャバン)は
パリ郊外にある家にもどる。
奥さんは、彼のかえりをまっていて、
これからはホテルの経営でもして、
かたぎにくらしくらそうともちかける。
でも、シャルルはまじめにコツコツ生きようなんて、
すこしもおもってない。
ムショをでたその日から、つぎの仕事をねらっている。
ふつうの映画なら、
ムショからでた銀行やぶりなんかを、
むかしの仲間がもうこれでさいごだからと
いやがってるのにむりやりさそうのが
よくあるパターンだけど、
『地下室のメロディー』はぜんぜんちがう。
ムショからでたその日に、
シャルルはもうつぎの仕事のことをかんがえている。
カンヌのカジノが標的だ。
週末の金庫には、10億フランがねむっている。
でかい仕事なので、仲間が必要になる。
シャルルはムショでしりあった
フランシス(アラン=ドロン)をさそう。
カジノの設計図を手にいれ、
大胆な計画をシャルルはたてていた。
作戦は予定どおりに うまくすすむ。
まんまと金庫にはいりこんだシャルルは、
棚におさまっている札束を、
ひとつのこらずていねいにカバンへおとしていく。
いそいでいるからといって、
ガバーッと雑な仕事をするようでは
りっぱな金庫やぶりにはなれない。
あせらずあわてず、おちつきはらって、
きっちりと札束をカバンにいれる場面にゾクゾクする。
仕事をおえたシャルルとフランシスは、
カバンふたつにおさめた札束を、
いったんべつの場所にかくしておく。
しかし、カジノの経営者に、
ふたつのカバンをしっかりみられていた。
警察はカバンの特徴をききだし、捜査をすすめようとする。
カバンをもちだそうとしていたフランシスは、
この会話をきき、札束のつまったカバンが、
いまや安全でないのをしった。
警察はフランシスのまわりにウジャウジャいて、
いまにもカバンを目にされそうだ。
フランシスは、とりあえず、プールにカバンをしずめて、
さわぎがおさまってから とりにもどろうとする。
あれだけカバンのはなしをされたら
(「カバンをみたらわかりますか?」
「もちろんです」
みたいな)
フランシスでなくても どこかへかくしたくなるだろう。
とりあえず、プールにしずめるのは、
いいアイデアだとおもったけど・・・。
ラストのきりあげかたがうまい。
もうすこしでうまくいったのに。
みおわったあと、血がさわいだ。
まだわかいアラン=ドロンがいい味をだしている。
行儀のわるさ、下品さがうまい。
顔だけでなく、スタイルもいい。
いまのハリウッド俳優は、
筋肉をとくいげにみせびらかすけど、
この作品でのアラン=ドロンは、
ほっそりとひきしまったからだがきれいだ。
この作品の教訓はふたつある。
カジノや銀行にしのびこむなら、
めだたないカバンを用意すること。
もうひとつ。
カバンのチャックはしっかりとめたほうがいい。
スポンサードリンク