2018年05月04日

『そしてミランダを殺す』(ピーター=スワンソン) ミステリーをよむだいご味

『そしてミランダを殺す』
(ピーター=スワンソン・務台夏子:訳・創元推理文庫)

ミステリーには、うつくしい女性がいたほうがいい。リリーみたいな。
ものがたりは、空港の待合室で、
リリーが男性に声をかけるところからはじまる。
(以下、ネタバレあり)
おしゃべりをしてるうちに、
男性が妻(ミランダ)へのうたがいを口にする。
ヒースローからボストンへのながい旅のあいだ、
ふたりは男性がのぞんでいる、妻への復讐計画をはなしあう。
交換殺人とはちょっとちがうけど、
おもてむきはリリーに動機がないので、
協力しても彼女は犯行をうたがわれない。
計画は順調にすすみ、もうすこしで実行というときに・・・。

427ページあるこの本は、でだしからすぐにひきこまれる。
よみながら、わたしはあい反するふたつのおどろきをメモしている。

・あと100ページもあるのに、
 もうクライマックスをむかえてしまった。
 いったい、このさきどうなるんだろう。
・あと23ページしかないのに、このさきどうまとめるのか。

ものがたりは、わりとはやい段階で急展開をみせ、
そのあと二転三転しながら 終盤へいっきにすすむ。
「ゴーン・ガール」をおもいださせる
ミランダの欲にまみれた本性を、
おちつきはらったリリーがおいつめる。
生きるだけの価値を、だれもがもっているわけではない、
というリリーの確信がたのもしい。
彼女が正義のヒーローにおもえてくる。

わたしはこの本をよむまえに、ねるまえの読書として
梅棹忠夫さんの『モゴール族探検記』をよんでいた。
そのまえは、おなじ梅棹さんの『東南アジア紀行』。
2冊とも、なんどよんでもひきこまれる。
ベッドでの読書は、探検記にとどめをさす、
とおもっていたけど、『そしてミランダを殺す』により、
上質のミステリーほど夜の読書にピッタリなものはないと訂正した。
ついお酒をのみすぎるのが問題点だけど。
リリーの聡明さにさいごまでひかれ、
ミランダからは女性のこわさをまなぶ。
務台夏子さんの訳もすばらしい。
第1級のミステリーをたのしんだ。

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posted by カルピス at 09:58 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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