2018年06月01日

『甘いお菓子は食べません』(田中兆子)女性が自信をとりもどしていくものがたり

『甘いお菓子は食べません』(田中兆子・新潮文庫)

6編からなる短篇集で、登場人物が
すこしずつかさなっての連作となっている。
「結婚について私たちが語ること、語らないこと」
がおもしろかった。

タイトルどおり、結婚をめぐる女性たちの心理がえがかれている。
ベシ子(41歳)・のんちゃん(25歳)・あやっぴ(34歳)は、
おなじゴルフ場ではたらくキャディー仲間だ。
生まれてはじめてプロポーズされたと、
3人であつまったのみ会で、ベシ子が報告する。
3人のうち、のんちゃんだけは20歳年上の会社社長と結婚しており、
ベシ子とあやっぴは、それぞれの理由から結婚をねがっている。
のんちゃんは、貧乏なくらしからぬけだすために、
愛や外見よりも、お金をもたらしてくれる男性をえらんだ。
結婚は金だと、玉の輿にのった自分を肯定している。
あやっぴは、そこそこの外見なのに、
なかなか結婚できず、あせっている。
ベシ子の本心をいえば、
どうしても、なにがなんでも結婚したいわけではない。
ただ、容姿のすぐれない自分を、
えらんだくれたる男性がいたという事実で生きやすくなる。
 ガリガリ君(ベシ子にプロポーズした男性)はなぜか一目見たときから私のことを気に入っていて、それがずっと私の自信になっていたのだ。私にとっては、結婚相手が金持ちとか才能があるとかハンサムとかいうことよりも、私のことが好きで、心から私との結婚を求めているかがはるかに重要だったのだ。

あやっぴは、そこそこの男性と、恋愛したうえで結婚したい。
34歳という年齢から、あせっているものの、
なりふりかまわず婚活にうごく自分はゆるせない。
3人がのぞむ結婚はさまざまながら、
結婚は彼女たちに自信をあたえてくれる。

すこしまえによんだ『セクシー田中さん』
(葦原妃名子・小学館)は、
40歳の田中さんがベリーダンスをならい、
すこしずつ自信をとりもどしていくマンガだった。
56歳のわたしからすると、
40なんてまだまだじゅうぶんわかくおもえるけど、
女性にとっての40歳は、かなり深刻な年齢らしい。

こうした本は、女性たちが結婚と恋愛になにをもとめているのか、
わたしにもわかるようにおしえてくれる。
口にだすことばだけでなく、
かたらなかったことのなかに、彼女たちの本心がかくされている。

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posted by カルピス at 21:49 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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