85円でしいれた野菜を、100円でうる。
すこしはもうけがでそうだけど、
農家の方がつけた値段をいい値で、
そして だされた野菜をぜんぶかいとるので、
もうけはほんのすこしか、ときにはマイナスの日もある。
農家といっても、むかしはともかく、いまはたのしみとして、
ほんのすこし野菜をつくっている、というひとたちだ。
なんでそんな活動をはじめたのかというと、
地域でくらすおとしよりたちに、
いきいきとくらしてほしいからだ。
以前は野菜や農産物の加工品をあつかう「なんとか市」に
つくった野菜をもっていっていたそうで、
それが、地域の高齢化とともに、
中心になってやるひとがいなくなり、
野菜をうる場所が いまはどこにもないという。
野菜をつくっているのは おとしよりがおおく、
自分で出荷するのはたいへんらしい。
わたしがつとめる事業所は、障害者介護を専門としたNPOで、
提供したサービスについて市町村に請求書をおくると、
確実にうりあげがでて、職員に給料をはらえる。
いちにちをじゅうじつしてすごすとか、
お弁当やクッキーをつくって工賃をえるとか、
入浴や身のまわりのお世話など、
障害をもったひとが必要とするサービスを、
最小限のお手つだいというかたちで提供する。
それはそれで、ちゃんとした仕事なわけだけど、
国や市町村がきめたサービスを、きっちり提供するだけでは、
生活のうるおいというものに、なかなか手がまわらない。
ひとは、あそんだり、たとえわけのわからないエネルギーだって、
発散させなければ、じゅうじつしてくらせない存在だ。
いっけん介護と関係のない活動でも、
もうけにならないお店にしても、
その場所があると、なんとなくじゅうじつした時間をすごせる、
という空間を、おおくのひとが必要としている。
4月からはじまったカフェも、そんな場所のひとつだ。
みじかいスパンでとらえると、
利用者がかかわらないカフェなんて、
事業所とすれば、ほとんどもうけにならない。
それでも とにかくお店をひらいて 実績をつくっておけば、
そこではたらけそうなひと、
いごこちよくすごせそうなひとに、
あとからでもつかってもらえる。
じっさい、カフェには地域の方が常連さんとなって
なにかにつけてあつまる場所となり、いつもにぎわっている。
そして、ほかの活動では なかなかおちつけなくても、
しずかなカフェでの仕事なら
自分の居場所としてすごせるひとがでてきた。
こうしたつみかさねによって、
地域が魅力ある場所になるのなら、カフェや野菜市は、
とてもNPOらしい とりくみといえる。
あつめた野菜は、このカフェにおかせてもらっている。
7軒の農家をまわると、30〜50袋の野菜があつまるので、
それを箱にいれて カフェのそとにおいておくだけだ。
1袋100円なので、適切な値がつけてあれば、あんがいうれていく。
まだはじまったばかりなので、野菜をだす方も、
うけとるわたしたちも、値段がよくわかっていない。
しばらくしたら、うごきがおちついてきて、
野菜をだすひとにも、かうひとにも、
たのしみな野菜市場になるのではないか。
カフェだけでは、ぜんぶの野菜をさばききれないだろうから、
クッキー工房のとなりにひらく
「となりのお店」にも野菜をおく予定だ。
介護事業のソロバンをはじくだけでは、
カフェや野菜市をひらく発想は なかなかでてこない。
わたしたちの事業所は、活動をはじめてから15年がたち、
ようやく直接は介護と関係のない事業にも、
手をだす余力が でてきたのかもしれない。
カフェと野菜市は理事長による直営で、
ほかの事業所にはない自由な場所となりつつある。
介護だけにとらわれない、NPOらしい活動として気にいっている。
スポンサードリンク