2018年07月19日

『砕かれたハリルホジッチ・プラン』(五百蔵容)

『砕かれたハリルホジッチ・プラン』
(五百蔵容・星海社新書)

W杯の2ヶ月まえのだいじな時期に、
代表監督がきゅうに解任されるという「事件」のうらには、
いったいどんなうごきがあったのだろう。
世間で話題になった事件のあとでは、
こうした「しらざれる真実」みたいな本がよくつくられる。
ただ、そうした本は、きめつけた視点による
質のひくいゴシップ本になりがちな印象がある。
事実をあきらかにするというよりも、
「事件」につけこんだだけのまずしい内容ではないかと、
本屋さんでページをめくりながら、
わたしは本書へうたがいの目をむけていた。
わたしはこれまで五百蔵さんのかかれた本をよんだことがなく、
内容にたしかさがかんじられない本では残念だから。

さいわい五百蔵氏は、誠実なサッカーライターで、
事実をあきらかにしながら
ハリルホジッチ氏のひととなりを紹介している。
ただ、おおくの紙面をわりあて、
戦術がくわしく説明されているものの、
わたし程度のにわかファンには
むつかしすぎて理解できなかった。
ハリルホジッチ氏がやろうとしたサッカーを、
ほんのすこしイメージしたにすぎない。

ハリルホジッチ氏といえば、「デュエル」(1対1のたたかい)と
「たてにはやい攻撃」を
日本代表にもちこもうとしたことでしられる。
これらのキーワードは、いっけんわかりやすいがゆえに、
ひとりあるきしやすく、まちがった解釈がひろまりやすい。
 残された言葉を確認する限り、ハリルホジッチは「縦に速く」とは1回も言っていません。対して、「スペースに、背後に速く入っていくサッカーをしたい」という意のことは、就任以来何度も語っています。

サッカー協会が、ハリルホジッチ氏がめざすサッカーを
正確につたえようとするのではなく、
反対に、あやまった解釈をほったらかすことで、
解任の理由につかわれたような印象をうける。

Wカップロシア大会で、日本は予想以上の活躍をみせ、
社会現象とでもいうべき ひろがりのある大会となった。
グループリーグをかちあがったこと、
決勝トーナメントでベルギーをあいてに
いい内容の試合をしたことで、
しだいに日本代表がおおきな関心をあつめた。
とはいえ、だからハリルホジッチ氏の解任はただしかった、
とはならない。
じゅうぶんな準備期間があれば、
もっとうえの成績をおさめていた可能性だってある。
ハリルホジッチ氏は、世界をあいてに、
かつことのむつかしさをよくしっている人物であり、
どんな選手をえらび、グループリーグをたたかったのかを
ぜひWカップ本番でみてみたかった。

資料として、ハリルホジッチ氏を代表監督にまねくときに、
日本サッカー協会の技術委員長として、
重要な役割をはたした霜田正浩氏へのインタビューがのっている。
田嶋幸三会長よりも、ずっとまともな感覚のもちぬしで、
霜田氏がハリルホジッチ氏をささえつづけていたらと、
いまになっても残念でならない。

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posted by カルピス at 22:37 | Comment(0) | サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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