遠藤さんというネコが よる町をまわり、
なみだのにおいをかぎつけて、
かなしんでいるひとの相談にのる。
ありえないはなしだけど、
登場するネコたちにすっかりなじみ、
わたしにはリアルな世界におもえてきた。
わたしのいちおしは、内気な性格のラミーだ。
元野良猫で、生きる苦労をしっているせいか、
なかなかもらわれた家のメンバーにあまえられない。
キャンキャンと、ストレートにお父さん・お母さんのもとへ
とびこんでいく犬のラピのうしろで、
じっと自分がよばれるときをまっている。
人間のお父さん・お母さん、そしてラピも、
ラミーがだいすきなので、ラミーはすこしずつ
こころをひらいて、みんなの愛をうけいれていく。
ネコにはそれぞれいろいろな性格があり、
あまえた声で自分の要求をじょうずにつたえるネコがいれば、
いつまでもひとになれず、距離をおこうとするネコもいる。
『夜廻り猫』にでてくるネコたちは、
人間のことばを理解したりはなしたりするのでわかりやすいけど、
現実の世界を生きるネコたちもまた、
きっとおなじようにゆたかなこころをもっている。
遠藤さんは、ラミーにひとつのアドバイスをおくる。
おまいさんはよく頑張ってる
あのな いじけたくなったら
3回頑張れ あと3回
それでも駄目なら 堂々といじけていい
けさ、ブロック塀のうえを、
ときどきみかける野良猫がとおりかかった。
子ネコのココは、外にいるネコにちかづこうと網戸によじのぼる。
野良猫はあまりこわがらず、ココとわたしをじっとみつめ、
ちいさな なき声をあげる。
おなかがすいているのかと、お皿にネコごはんをいれて さしだすけど、
さすがにそんなやり方では警戒してたべない。
お皿を外において仕事へでかけると、かえってきたときも
たべずにそのままごはんがのこっていた。
現実の世界では、おなかをすかせたり、
病気にかかってうずくまっているネコをときどきみかける。
そのすべてにかかわるわけにはいかないので、
声をかけるだけで わたしはその場をはなれる。
子ネコの重郎が熱をだし、ご飯をたべられなくなったとき、
このままでは死んでしまうと、
遠藤さんは人間の永沢さんをたよろうときめる。
永沢さんは、いざというときにお世話になろうと、
遠藤さんが信頼している人間だ。
重郎を永沢さんにたくし、遠藤さんはひとり家をでる。
重郎は遠藤さんのあとをついてきていた。それでも遠藤さんは、
重郎へのおもいをたちきってひとりさきをいく。
あとから友だちのニイが、
重郎をくわえて遠藤さんのもとにやってきた。
ニイは遠藤さんにむかってつぶやく。
いきられりゃ いいってもんじゃない
おれたちには 心があるんだ
こんな『夜廻り猫』の世界が、わたしにはとてもリアルだ。
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