「三森アニソン研究所P」というコーナーがあり、
研究員の前田久さんがアニメ作品をとりあげて、
その魅力をプレゼンしてくれる。
といっても、最近のアニメ作品は、タイトルをきいたことさえなく、
わたしにはなんのことだかほとんどわからない。
こういう番組に、宮崎さんの作品は場ちがいで
とりあげられないのだろうと、あきらめていたら、
きょうは『パンダコパンダ』の主題歌がながれた。
前Qさんが、ハロウィンの仮装として、
パンダのかっこうをしていたことから、
パンダといえばこの作品、という関連づけだ。
『パンダコパンダ』は、1972年当時の
パンダブームにあてこんでつくられている。
そんな動機不純な作品をだれがみるものかと、
小学生だったわたしは、バカにして劇場へいかなかった。
宮崎さん・高畑さんがかかわった作品であることをあとからしり、
おとなになってビデオテープをかってみると、
そのたのしさにすっかりひきこまれてしまった。
これぐらい、こころをげんきにしてくれる作品はあまりない。
ひとりぐらしをしている女の子(ミミちゃん)の家に、
パンダの親子がやってくる、という
ありえないはなしなのだけど、
作品をとりまくゆったりした世界観がすばらしく、
みているうちにうれしくなってきて、
たいていのことはどうでもよくなる。
ミミちゃんは、お父さんとなった「パパンダ」に
「おとーさんは、会社へいくものよ」と、
カバンをもたせ、動物園へ仕事にかよわせる。
パパンダが、とまどいながら電車にのって通勤し、
ぶじに仕事をおえてかえってくると、
むかえにきていたミミちゃん・パン(コパンダ)の3人で
手をつなぎながら、家への道をあるいていく。
たよりになるおとうさんと やさしいおかあさんがいて、
みんななかよく くらしている、という幸福感が格別だ。
第2作目の『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』では、
大雨がふって、家が水につかってしまう。
大水は、おとなには、たいへんな災害だけど、
子どもにとっては、とつぜんあらわれた めずらしい景色だ。
高畑さんは「日常生活のなかの冒険」といっていたようにおもう。
冒険は、子どもたちにとって、
なにかとくべつな状況のもとにおこなわれるものではなく、
日常のなかにだって、わくわくするできごとがたくさんある。
家が水につかっても、パンダの親子とミミちゃんは、
ベッドを船にして、サーカスの動物たちをたすけにでかける。
水のなかは透明にすんでいて、
家のなかには魚たちがはいりこんでいる。
ほんとうの水害は、こんなのどかな光景ではないわけだけど、
漫画映画のなかでは、たいへんな状況さえ冒険の場となる。
おとなのわたしがみてもたのしいこの作品は、
もちろん子どもたちのこころもとらえる。
わたしがスイミングスクールではたらいていたころ、
なにかの行事で『パンダコパンダ』の上映会をひらいたら、
子どもたちは画面から目をはなさず、集中してみていた。
まだほとんどしられていなかった『パンダコパンダ』を
上映作品にえらんだわたしは すごくとくいだった。
おとなもこどもも、こころが『パンダコパンダ』なら、
まちがいなく世界は平和なのに。
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