2018年12月18日

『おすすめ文庫王国 2019』

『おすすめ文庫王国 2019』(本の雑誌社)

まえは毎年たのしみにしていた 「おすすめ文庫王国」だけど、
わたしのこのみとずいぶんすれちがうようになり、
おすすめ本情報としての役をはたさなくなった。
ことしのベスト10に、佐藤正午の『鳩の撃退法』が
えらばれなかったのをみても、わたしとの距離をかんじる。
もっとも、都内にある丸善と三省堂のうりあげでは、
『鳩の撃退法』の上巻が、三省堂で86位、丸善は74位だから、
一般的にも熱狂的にうけいれられたとはいいがたいようだ。

情報はえないけれど、よみものとして
『おすすめ文庫王国』のおもしろさはみとめている。
ながねんかわらないことにより、
地味だけどいい味をだしているかわった本だ。

まえにあげた2書店のはなしあいをよむと、
本屋さんのたいへんさがすこしはわかってくる。
三省堂
結局、新刊も既刊も関係ないんですよね。とにかく何か話題があればとびつくっていう傾向が顕著になっている。カズオ・イシグロがノーベル賞獲ったなんて最たるものですね。

丸善
話題があればまだ日頃書店に来ない人も本を買ってくれるっていうことですよね。

三省堂
すごくその傾向が強くなっている気がします。あとこのデータも見て思いましたけど、もう上下巻は買ってもらえない時代なんだなあって。西加奈子の『サラバ!』の上中下の売れ数の差に愕然としました。

『鳩の撃退法』も、ベスト100にはいっているのは上巻だけだ。
あんなにおもしろい小説が、一部ではすごく話題になっていたのに、
ぜんたいでみると、わずかなうれゆきでしかない。
話題になった本だけがうれるなんて、ひどい世界だ。

「サッカー好き書店員匿名座談会」による
文庫Bリーグが7年目をむかえている。
文庫をだしている出版社に サッカーチームらしい名前をあたえ、
その順位がまいとしはなしあわれる。
なぜその順位になったかの根拠が「総評」にまとめられており、
よみものとしておもしろいし、
よくこれだけどうでもよさそうなことに
ちからをそそげるものだと感心する。
出版業界におけるうきしずみが、順位表をよんでいるとわかる。
「文庫王国」でいちばん よみごたえのある企画だ。
おそらくその労力にひきあうほど よまれていないとおもけど、
かってにはなしあい、それが7年もつづいているところがすばらしい。
わたしはとくにどこのサポーターでもないけれど、
リーグ全体の底あげをねがっている ささやかな文庫愛好者だ。

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posted by カルピス at 23:11 | Comment(0) | 本の雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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