余裕をもって午後2時半には関空についていたので、
空港で11時間まっていたことになる。
ことばにすると「空港で11時間まった」と、
それは気のどくだったね、ですむ他人事だけど、
空港で11時間まつながさは、
空港で11時間まったものにしかわからない。
航空会社のカウンターで、チェックインはできるものの、
飛行機がとぶ時間まで、あまりにもはやすぎるため、
パスポートコントロールにはすすめない。
けっきょく9時半までずっと4階の国際線出発フロアで時間をつぶす。
出国審査をおえたからといって、なにもすることはないのだけど、
それでもただひたすらまつ身にとって気分がちがう。
荷物の検査へすすめたときは、やっと第一関門をこえた気分だった。
出発フロアでは、本をよみ、iPodをきくぐらいしかすることがない。
ときどきイスのうえに横になるけど、ねむれるわけではない。
まっていると、なさけないことに、
まつことになれてきて、さいごのほうは
あんがいすぐに時計の針がすすんでいった。
『異邦人』のなかでムルソーが、
自分の部屋にあるこまかなものをひとつひとつおもいだして
刑務所の独房でたいくつせずにすごしている。
ひとは、まつことにもなれてしまうみたいだ。
日産のゴーンさんは、独房でなにをしながら
時間をつぶしていたのだろうか。
ひたすらまちつづけ、さいごには、
出発といわれた0時20分から
さらに1時間おくれるおまけまでついた。
けっきょく深夜の1時半に関空を出発し、
けさの5時半にバンコクのドンムアン空港に到着する。
タイは2時間の時差があるため、飛行時間は6時間だ。
ほんとうなら、夜の10時に空港につき、
深夜には予約していたホテルにチェックインしていたはずなのに、
その予定時間にようやく出発できたわけで、
飛行機にのりこむときは なすがままの心境だった。
人質事件がおきると、とらわれたひとたちは
束縛されるのになれ、犯人たちのいうままに
なにも抵抗できなくなるのと なんだかにている。
空港から路線バスにのり、旅行者があつまるカオサンへ。
まえにとまったことのあるゲストハウスで部屋をもとめる。
トイレ・シャワーが共同で、ただベッドがおいてあるだけの部屋に、
いちどはきめたものの、
バンコクはおもっていたよりもあつく、そんな部屋にいたら
頭もこころもつらくなるので、エアコンつきの部屋にかえる。
そのあとは、ご飯をたべに近所の店へでかけたり、
タイマッサージをうけたりと、
ひたすらからだをやすめるだけに きょういちにちをあてる。
飛行機がおくれたために、いちにちが空白となってしまった。
旅行では、よくあることとはいえ、さすがにつかれはてた。
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