「出版業界消えたもの列伝」。
文壇バーだのケンカだのがあがっており、
いまそんなことをいわれると、
すごくむかしのできごとにおもえる。
なくなって当然、いまあるほうが不思議だ。
社内座談会として、
「本の雑誌社から消えたもの」が
はなしあわれている。
カーボン紙とかカセットテープ、
みたいなはなしはよくわかるけど、
本の雑誌社でおこなわれていたという
ギャンブルやチンチロリンがなくなったことや、
屋上にふとんをほしていたことなど、
ふつうの会社では まずしないような かわったおこないが、
むかしばなしとしてかたられている。
本の雑誌社には、フロッピーをよみこむために、
まだワープロがあるそうだ。
本の編集にかかわる最先端の業種かとおもっていたのに、
意外とふるい機械がいきのこっている。
おもしろかったのは、むかしは旅館をかしきって
忘年会をやっていた、というはなし。
発人 助っ人と執筆者の人も呼ぶと百人くらいにはなったから。酒も持ち込んで、一晩中話をしたりチンチロリンをやる部屋があったり(笑)。
営B よくそんなお金がありましたね。
発人 会費制です(笑)。
営A 今でもやると言えば来るんじゃない?
営B 幹事やった人、偉いなあ。
営A 対応できる体力が俺たちにはもうない。次の日から三日くらい寝込むよね。
編A 若さがあったんだねえ。
営B 若さもなくなった・・・。
というのがオチになっている。
運動会と社員旅行もなくなったそうだ。
こうしてみると、かわった会社におもえていた「本の雑誌社」も、
日本の会社にありがちな変化を、そのまま体験してきた、
あんがいフツーの会社なのかもしれない。
いまだったら、パソコンとソフトをつかえば、
ずいぶん便利になる仕事でも、たいした理由なしに、
というか、変更するのがめんどくさいので、
まえとおなじやり方を つづけてることって よくある。
わたしが仕事にかよっているクッキー工房では、
A4の1枚シートに 40ほどのマークを印刷し、
そこにカッターできれめをいれてから、
一枚いちまいのシールをはがしていく。
いくらなんでも手間がかかるので、
ラベル用紙をだしている会社のソフトをつかい、
はじめからラベルのおおきさに きれめがいれてあり、
さっとはがせるシートをためしてみた。
カッターをつかわないと、こんなに楽なんだとおどろき、
いままでの仕事はなんだったのだとあきれている。
とはいえ、カッターでシートにきりこみをいれるのは、
手間だけど、あんがいたのしい作業だった。
時間がたつのをわすれてしまうぐらい こころを集中させる。
あれはあれで、味わいのあるシールだった。
もうあとにはもどれないけど、
もしあの工程がいまものこっていたらと、
いまさらながら、なつかしくおもう。
効率はわるいけど たのしい仕事は、
もっともらしい理由をつけてでも、そのままのこしたくなる。
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