2019年04月19日

『自作の小屋で暮らそう』(高村友也)月2万円でのベーシックライフ

『自作の小屋で暮らそう』(高村友也・ちくま文庫)

なんで「自作の小屋で暮ら」すのかというと、
あまりお金をつかわずに生きたいからで、
著者はそうした生活を「Bライフ」と名づけている。
路上生活者の段ボール小屋とちがうのは、
だれにも文句をいわれないで、
自由にねっころがっていられる場所をもとめての
小屋づくりだから。
「B」はベーシックの「B」だ。必要最低限の生活。
似たような本はたくさんみかけるけど、
この本が類書とちがうのは、特別な知識や技術がなくても
幼稚ともいえる素人のこころみで なりたっている点にある。
小屋をたてるのもそうだけど、トイレや排水システムなど、
大工仕事がじょうずなひとでなくても、
たいしてマメな性格でなくても、
つまりわたしのような人間にも
できそうなのがBライフだ。

著者は、しずかでいごこちのよさそうな雑木林に目をつけ
最小限のひろさの土地を 68万円までねぎって手にいれる。
そこにツーバイフォー工法で10平米の小屋をたてた。
費用は全部で10万円強。
土地をかい、小屋があれば、そこはもう自分の家だ。

毎月の生活費がのっている。
・食費 1万円
・ガソリン 200円
・インターネット 5000円
・年金 0円(全額免除)
・健康保険 1500円(7割免除)

など、合計で2万円となっている。
電気はソーラーパネルで、ガスはカセットコンロ、
排泄物や生活用水は畑にもどし、
洗たくやちかくの川、お風呂はときどきの銭湯。
「多少の汚れは気にしない」のだそうだ。
もしも2万円でくらせたら、1日8000円の仕事を
月に数回やれば生きていける。

税金と社会保険についても
こまかなしくみが紹介されている。
収入がすくなければ、
税金や社会保険がほとんどかからないそうで、
生活費一覧にのっているように、
国民年金は全額免除、健康保険は7割免除となる。
それでも年金は半額おさめたものとして計算されるので、
65歳以降は毎月3万円もらえるというから、
収入がすくないのもわるいことばかりではない。
日給を8000円として著者が試算すると、
週1日くらいでのんびり働きながら(30歳から)65歳までBライフしたとすると、年金をもらう頃には840万円の貯金ができる。

というから、会社づとめがバカバカしくなる。

とはいえ、Bライフをおくるよりも、
フツーの生活のほうが「お得」なのはたしかで、
それなのに、なぜ高村さんはBライフをえらぶのか。
まとめにあたる「なぜBライフか」で高村さんは、
「自由」をあげている。
最後に、「自由」という動機がある。言葉にしてしまうとこれほど色褪せてしまう概念も珍しく、できれば自分からは口に出したくない言葉だが、これを挙げなかったら嘘になってしまう。

本書が単行本として出版されたのは2011年で、
文庫本となったのが2017年。
5年半のあいだに、状況はいくらかかわったものの
(インターネットがやすくなったり)、
高村さんはいまも小屋でのくらしをつづけている。

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posted by カルピス at 20:13 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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