2019年04月30日

『誰がために鐘を鳴らす』(山本幸久) 極上の青春小説でもあり、お仕事小説

『誰がために鐘を鳴らす』(山本幸久・角川文庫)

Web本の雑誌に、書評家の目黒考二さんが
「書評依頼は4枚だったのに、12枚も書いてしまった話」
http://www.webdoku.jp/column/meguro_n/2019/03/29/093019.html
として本書をとりあげている。
もちろんそれは、『誰がために鐘を鳴らす』が
ものすごくおもしろかったからで、
「12枚も書いてしまった」という解説をよむと、
山本幸久作品がすきだという目黒さんの興奮が、
そのままつたわってくる。
山本作品によくある「あそび」として、
ほかの小説の登場人物が、本書にも顔をだしており、
それが山本作品のファンには、また たまらないのだ。
どうでもいいような、そんなはなしを、
目黒さんはおおくの紙面をさいて紹介している。
解説というよりファンレターにちかい。
そして、こうしたあついおもいは、
論理的に作品のよさにふれる解説よりも、
よむもののこころをとらえる。
(文庫本の解説は、北上次郎の名で のせられている)

文庫の帯には あさのあつこさんが
上質の青春小説でお仕事小説。少年たちの誇りと職人の矜持が鳴り響く。

とコピーをよせている。
ほんと、そのとおりのものがたりで、
青春小説であるとともに、お仕事小説でもあるのがすごい。
このふたつをさらっと同時にもりこめるのが、
山本幸久さんのうまいところだ。

本書は、ハンドベルをめぐる部活小説でもある。
クラスメートなのに、はじめは目もあわせなかった4人が、
ハンドベルの練習や発表会をつうじて
しだいにかたいきずなでむすばれた仲間へと成長していく。
うばわれたハンドベルをとりかえそうと、
チンピラとの対決があったり、
先輩である年上の女性にときめいたりと、
エンタメの要素もじゅうぶんで、
ゼロからはじまった登場人物たちの関係が、
だんだんとゆたかにからまっていく。
アイツはハンドベルを奪い返すためだけじゃなくて、諏訪高ハンドベル部の名誉を取り戻すために戦ったんだ

なんて、おもわずジーンとなった。
これはもうひとつの『バンド・オブ・ブラザース』だ。
つぎのページへすすむのが まちどおしいわくわく感を、
ひさしぶりに味わう。
本って、仲間っていいなーとおもわせる、極上の小説であり、
この本をよまないのはもったいない。
よみおえたあとのすがすがしさが格別だ。

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posted by カルピス at 10:03 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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