2019年05月31日

『宝島』(真藤順丈)沖縄をとりもどすヒーローたちのものがたり

『宝島』(真藤順丈・講談社)

沖縄を舞台に、敗戦から本土への返還までの20年がえがかれている。
米軍基地から物資をうばう「戦果アギヤー」たちが主人公で、
嘉手納基地への襲撃からものがたりがスタートした。
襲撃は、米軍側に気づかれ、戦果アギヤーたちは
ちりぢりになってにげまわる。
なかまの中心だったオンちゃんのゆくえがわからなくなり、
戦果アギヤーの活動は下火になっていく。
しかし、物資こそ うばわなくなったものの、
彼らは沖縄を アメリカと日本からとりもどすために、
それぞれの立場から たたかいをつづけていった。

嘉手納・普天間・辺野古・・・。
沖縄の基地問題が話題にのぼるのに、
わたしはどこになんという基地があるのか
まったくしらなかった。
『宝島』にでてくるコザも、きいたことがあるていどだ
(いまは沖縄市となり、コザは地図から名前がきえた)。
このものがたりは、小説というよりも、
教科書として 沖縄の歴史を わたしにおしえてくれる。
著者の真藤さんは、沖縄で生まれそだったひとかとおもったら、
東京都うまれなのだという。
小説のことばづかいが、いかにも沖縄らしい。
よほどつっこんだ取材をされたのだろう。
文体も独特で、しいたげられてきた沖縄のいかりが
文章のあちこちから たちのぼってくる。

20年ほどまえ、わたしがはたらいていた事業所で
沖縄旅行が計画された。
しかし、直前になってとりやめている。
海外でぶっそうな事件があいつぎ、
アメリカ軍の基地をかかえる沖縄が、
テロ活動の標的となるおそれがでたためだ。
沖縄にかわり、どこかべつの観光地への旅行となった。
テロの標的になる可能性があるからやめる、というのは、
いまおもえば 沖縄のひとたちにものすごく失礼な発想だ。
沖縄にすみ、これからも沖縄で生きていくひとたちに基地をおしつけ、
自分たちは安全なところから 関係ないような顔でながめている。
どのつらさげて、あぶないから旅行をやめるなんていえるのだろう。
沖縄が標的となるおそれがあるのなら、よけいに沖縄へでかけ
沖縄の状況を すこしでもまなぼうとするのが筋だろうに。

『宝島』の表紙には、「HERO's ISLAND」ともかかれている。
『宝島』は、沖縄をとりもどすヒーローたちのものがたりだ。

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posted by カルピス at 21:59 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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