『負け犬の遠吠え』で話題となった酒井順子さんが、
9人の「先達」との対談にのぞみ、一冊にまとめてある。
10本目は香山リカさんが相手で、総括として位置づけられている。
ライス国務長官は「負け犬か」など、個別事例の検討がたのしい。
「負け犬」とは、いったいなんであるかが、
こうした対談により、しだいに整理されていくだろう。
・阿川佐和子
・内田春菊
・小倉千加子
・鹿島茂
・上坂冬子
・瀬戸内寂聴
・田辺聖子
・林真理子
・坂東眞砂子
・香山リカ(総括)
いまさらだけど、かんたんにおさえておくと、
酒井さんは『負け犬の遠吠え』で、
30歳以上・未婚・子なしの女性を「負け犬」と定義している。
それなりにたのしくくらしているけど、
結婚してないという一点で 人生における「負け」をみとめ、
お腹をさらした本として、2002年に出版された。
目ざわりかもしれないけど、あまりいじめないでね、
という下手にでたスタンスなのに、
過激なタイトルがよむひとを刺激するのか、
結婚してないけど、わたしは負けてない、とか、
勝ち犬だけど、負けてる、とか
勝ち組との混同がおこるやらで、いろいろと話題になった
(オスの負け犬も、もちろんいるけど、
本がおもにとりあげるのはメスの負け犬について)。
林真理子さんとの対談では、
「負け犬」現象の初心者として、林さんが酒井さんにたずねている。
林さんだと、お説教じみた発言になるのでは、とおもっていたので、
きき手にてっする林さんに好感をもった。
林 水野真紀子さんは?負け犬のエース格でしたけど(笑)。
酒井 「ザ・勝ち犬」みたいな風情なのに、三十歳過ぎまで結婚しなかったところで負け犬たちの共感も呼んでたと思うんです。でも、元の道にちゃんと帰っていかれましたね(笑)。
いっけん「負け犬」にみえるひとでも、
本質は「勝ち犬」である場合、酒井さんはごまかされない。
「元の道にちゃんと帰っていかれましたね」
と、冷静な観察がさすがだ。
林 残りものの男性にはそれなりの理由がある?
酒井 まさに。同年代の負け犬の人も言ってました。「お見合いしてると、ほんとにむなしい」って。この年になってお見合いするって、魂をすり減らすような体験らしいですね。「いまお見合いが終わった。お願いだから愚痴を聞いてほしい」って電話がかかってきたりするんですよ。お見合いでまとまったというのは、ここ十年くらい聞かないです。いまさらお見合いで会う人と結婚できるんだったら、もうとっくに結婚してるということなんでしょうけど。
酒井さんのもとに、女性たちの赤裸々な声がとどいている。
女性の発言には 男にわからない記号が いくつもちりばめられている。
酒井さんというよき通訳をえて、わたしたちは女性の心理をしる。
負け犬は、あの本を出して、「人生は勝ち負けじゃないです」とか、「負け犬だなんてひどい」みたいに言われると、違うんです、と反論したくはなるんですけどね。世間から負け犬と見られているということをわかったほうがいいのではないですか、というメッセージなのに、私が「あなたは負け犬だ」って言ってる、という感じに思われがちなんですよ。ま、言っているんですけど。
「ま、言っているんですけど」
がすごくおかしい。
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