2019年11月30日

『月の満ち欠け』(佐藤正午・岩波文庫的)

『月の満ち欠け』(佐藤正午・岩波文庫的)

ものすごくこみいったはなしなので、
かんたんに説明はできない。
ふつう、ひとは死をもって世のなかからきえるけど、
主人公の女性は、月がみちかけするように、
なんどでもうまれかわり ひとりの男をしたいつづける。
前世とか転生とはちがう(ような気がする)。
といわれても すんなりわかるわけがない。
じっさいに本をよんでみるしかない。

よんでいて、とちゅうまではなしがよくみえないので
いったいなにがつたえたいのかと、モヤモヤ感がずっとある。
それでもさきをよみたくなるのだから、いつもながらうまい。
これだけ複雑なはなしをかきあげるのはさすがだとおもう。
本の表紙や奥付にある「岩波文庫的」という表現が気になる。
すんなり「岩波文庫」とするには、
岩波文庫はあまりにも権威がありすぎるようだ。
佐藤正午さんが「岩波文庫的」について
インタビューにこたえたちいさな「おしらせ」が
文庫本にはさんである。
 もともとは、「的」ではなく、「岩波文庫に」というリクエストだったんだ。いま思えば、単行本が刊行されてまだ二年半の小説を岩波文庫に入れろというのは無茶だったと思うんだけど、その無茶がおもしろいかなと思って「なんでこんなのを岩波文庫に入れちゃうの?」という悪評をね、聞いてみたかった。でもそれを担当の坂本くんに言ったら「無理です」って言うから、それじゃあ岩波文庫がダメなら岩波文庫風の装丁でつくれないか、という案が話の流れで出たんじゃないかな。

ふつうなら「解説」がのる場所に、特別寄稿の
「解説はお断りします」を伊坂幸太郎さんがよせている。
佐藤正午さんは、ずっと前から今と同じく、「小説センスの塊」で「小説というマシンの持つ能力を、フルに使える作家」だったと思います。

「解説」ではないかもしれないけど、
佐藤正午さんファンをよろこばすひとことだ。
タグ:佐藤正午

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posted by カルピス at 17:22 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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