角幡唯介さんのエッセイ集『エベレストには登らない』に、
「単独行大国ニッポンの不思議」というはなしがのっていた。
角幡さんのしりあいが、外国の冒険家から
「日本人はどうして単独行ばかり好むんだ?」と
たずねられたはなしを紹介している。
そういえば、堀江謙一さん・植村直己さんなど、
日本でしられている冒険家は、だれもが単独行をこのんでいる。
わたしは、欧米人もまた、基本は単独行かとおもっていたけど、
どうもそうばかりとはいいきれないようだ。
合理的に計画を成功させたいなら、明らかにパーティーで行動したほうが有利なのだ。単独行は何か<深い体験>ができる感じはあるが、明らかに手法としては非効率的なので、文化的にその<深い体験>に日本人ほどの理解を示せない訪米の冒険家は、単独行の非効率性ばかりに目が奪われ、なんでそんなことをするの?という疑問を持つに至るのだろう。
バックパックをかついで貧乏旅行をする人たちを見ても、一人旅の日本人はかなり多いように思う。それにくらべると西洋人の旅行者はだいたい、仲間か恋人を連れて二、三人で旅をしているようだ。これはいったいどういうわけなのだろう。
たしかに、わたしが外国を旅行しているときでも、
目にはいるおおくの欧米人は二人以上でうごいている。
わたしがひとりでさみしいおもいをしているのに、
彼らはグループでたのしそうな声をあげてもりあがっている。
彼女といっしょに旅行できるなんて、単純にうらやましい。
ひとりですごすほうが、よりふかい体験をあじわえるのだから、
旅行はとうぜんひとりがいいと これまでおもいこんでいた。
自分さがしだったり、修行としての旅行ならそれもわかるけど、
いつもひとりにこだわらなくてもいいのでは、とおもいだした。
つれがあったほうが ご飯を注文しやすいし、
間がもてるし、荷物の管理はらくだし、
ホテルやタクシーがわりやすだし、いいことづくめだ。
もちろんだれとでも旅行できるわけではないので、
むりにひととあわせるよりは、ひとりのほうがいい場合もある。
要は、ひとりを当然ときめつけず、
二人で旅行するよさも頭においておけばいい。
せんじつの沖縄旅行は、25年ぶりに配偶者とふたりで旅行した。
やすみがあわない、ということもあったけど、
ひとりがあたりまえとおもっていたから、
これまでは、ためらいなくひとりで でかけてきた。
ふたりでの旅行は、おもいがけず うまくいった。
角幡さんのこのエッセイ集は、
アウトドア雑誌『ビーパル』での連載をまとめたものらしい。
いかにも『ビーパル』らしく、読者の物欲をくすぐろうと、
それぞれのはなしにイラストや写真がついている。
そのうちのおおくが装備に関係する写真で
わたしなんかはつい、どのメーカーなのかが気になった。
ハードシェルに防水チャックをつけるなど、
余計な機能を批判する文章ものっており、角幡さんとしては、
読者の物欲にまで責任はもてないだろう。
しかし、あらゆるジャンルをほりおこし、どこまでもすきまをさがし、
初心者からお金をまきあげようとするアウトドアメーカーの存在を、
『ビーパル』のうしろにかんじてしまった。
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