2週間の隔離や、家からできるだけでない生活が
いよいよ現実味をおびてきた。
デイリーポータルZでは、「コタツ記事」として
家からでないでかいた記事の特集をくんでいる。
https://dailyportalz.jp/dpq/kotatsukiji_day2020
まえからあたためていた企画だそうで、
分析からポエジーに振り切ったものまで、……えーと、わりといつもどおりのラインナップになっております。
がおかしい。
わたしも、「コタツ記事だけの日」といわれるまで、
いつもとちがう方針でつくられているとは気づかなかった。
なかでもよかったのはSatoruさんによる
「ボスニア・ヘルツェゴビナの地図帳を読む」。
https://dailyportalz.jp/kiji/atlas_of_Bosnia-and-Herzegovina
サラエボの露天商でかった地図帳をひろげ、
おもいうかんだことがかかれている。
わからないことばがあっても、Satoruさんはあえてしらべない。
仮説をたて、推理をたのしむ。
なにしろ
七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家
といわれた旧ユーゴスラビアにあるボスニアなので、
ひとつの国のなかにも複数の民族がすみ、
それぞれにややこしい状況をかかえている。
知識をもったひとが地図帳をみれば、
いろんな推測をたのしめるようだ。
たとえば、イスラム教徒のおおいボスニアなのに、
特産品に豚があげられている地域がある。
私がふと思い出したのは、スルプスカ共和国の存在だ。それは独自の大統領と政府を擁する「国家内国家」で、正教徒のセルビア人が多数を占める。だから豚と暮らすのも問題ないのではあるまいか…?
これはあくまで仮説にすぎない。その正否もとくに真剣に追求しない。そうしたことには構わない場所で、酒でも飲みながら地図の世界にふける。時間がするすると流れてゆく。
(さらに仔細に読み込むと、この本には自国の民族・宗教に関する記述がないことに気づく。私はそこに引っかかりを感じる。紛争の影をそこに感じる。あらゆる出版物には人間の意思が入り込むのだ)
元日本代表の監督をつとめたオシムさんがボスニア出身だ。
ユーゴスラビアの紛争についてしりたくて、
木村元彦さんの本を何冊かよんだけど、
民族と宗教が複雑にからまり、わたしにはよくわからない。
Satoruさんは、地図帳のもともちぬしの無事をいのり、
下記のようにむすんでいる。
奥付によれば、本書は1998年にサラエボで出版された。紛争の終結からほどなく作られたのだ。
この本を最初に使った人が、もし6年2組のチェハジックさんであれば、彼女(または彼)は私と同世代ということになる。
いまこの瞬間に、チェハジックさんは、世界のどこにいるのだろうか。
生きていてくれ、と私は思った。
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