(梅棹忠夫:著・中牧弘充:編著・淡交社)
『梅棹忠夫の「日本人の宗教」』がとどく。
「梅棹忠夫生誕100年記念出版」なのだそうだ。
梅棹さんがなくなって10年がたつのに、
いまもなおポツリポツリと、
梅棹さんの本をよめるのはありがたい。
内容は、
第1章 幻の著書『日本人の宗教』を追跡する(中牧弘充)
第2章 宗教の比較文明論(梅棹忠夫)
第3章 民俗学者の発想「宗教について」(梅棹と中牧との対談)
となっている。
第1章の「幻の著書『日本人の宗教』」というのは、
「幻の著書」とは、もともと梅棹さんが淡交社から
『日本人の宗教』として依頼された本だったからだ。
これは『世界の宗教』(全12巻)の最終巻に位置づけられていた。
梅棹さんはさまざまな理由からこの本をかきあげらなかったものの、
準備としてかかれた「こざね」が、梅棹資料室にのこされていた。
そのこざねをもとに、梅棹さんがかきたかったであろう内容を、
中牧弘充さんが「追跡し、推理」してまとめ、本書となった。
淡交社の方々は、まさか企画の50年後に、
このような形で もとのタイトルどおりの本が
発行できるとはおもわなかっただろう。
おそろしく気のながい仕事をやりとげられた。
それにしても、「こざね」がのこされていてよかった。
完全にならべおえたこざねでなくても、こざねさえあれば、
あるていど梅棹さんがかきたかった内容を推察できる。
こざねは、執筆内容を整理するだけでなく、
本人にかわり、原稿のラフスケッチも しめしてもくれる。
「まえがき」のさいごには、
本書の姉妹編ともいうべき
『梅棹忠夫の「人類の未来」』が紹介されている。
この本は、1970年ごろに、
河出書房が企画した『世界の歴史』(全25巻)の
最終巻に予定されていたものの、
『日本人の宗教』とおなじように、実現する日はこなかった。
のちに小長谷有紀さんが「こざね」を資料としてまとめたものが、
『梅棹忠夫の「人類の未来」』として発行された。
どちらもの本も、シリーズの最終巻として期待されていたのに、
梅棹さん本人の著作とならなかったのがくやまれる。
ただ、梅棹さんが亡くなってからも、
こうして1冊の本としてよめるのだから、
中牧弘充さんほか、たずさわった方々、また淡交社に感謝したい。
ひさしぶりに手にした梅棹さんの本がたのしみだ。
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