2020年07月13日

『水を縫う』(寺地はるな)

『水を縫う』(寺地はるな・集英社)

「Web本の雑誌」の北上ラジオで、北上次郎さんがすすめていた。
http://www.webdoku.jp/column/radio/2020/0612083847.html
司会進行の杉江さんといっしょに、すごくもりあがっている。
北上さんは『本の雑誌 8月号』でもこの本をとりあげて絶賛している。
わたしがよみきれていないところに、
北上さんはたまらない魅力をかんじているようだ。
おなじく「Web本の雑誌」の「横丁カフェ」
(現役書店員が週替わりでおすすめ本を紹介する)
でも久田かおりさんがとりあげていた。
http://www.webdoku.jp/cafe/hisada/20200625074822.html

本書は、家族の6人が(家族でないひともふくめ)、
1章ずつ自分と家族をかたっている。
高校生の清澄は、男なのに刺繍がすき。
姉の水青は女なのに、かわいいものが苦手。
そんなふうに、家族それぞれ、ちょっとかわっている、
ということになってるけど、
男で刺繍がすきだって、ぜんぜんかまわないし、
べつにかわっているとも おもわない。
みんな、むかしにあったことをひきずっているのも
おもくかんじられ、わたしむきではなかった。
よみおえた感想は、そこそこおもしろいけど、
いまひとつ、となる。
この本がわるいのではなく、
こういうタイプの小説がわたしは苦手なのだろう。

70歳をすぎた祖母の文枝さんが、水泳教室にかよいはじめる。
50歳ぐらいのとき、家族全員でプールへいき、
彼女も水着になろうとしたら、夫から、
「そんな、若うもない女が水着を着るのは
 みっともないからやめときなさい」
と、とめられことをずっとひきずって生きてきた。
それ以来、25年をもんもんとすごし、
70をすぎたいま、とうとう水泳をはじめる気になった。
(水のなかを)歩くたび、自分のまわりを覆っていたかたい殻が剥がれ落ちていくようだった。
水につかっていた手を上げたら、指先から白いしぶきが生まれる。ぱしゃりと水面を叩いたら、透明の球がいくつも飛び出す。ああ、という声が喉の奥から漏れた。

わたしはスイミングスクールにつとめていたことがあり、
子どもから大人まで、はばひろい年代の会員におしえていた。
水泳をはじめようとおもったきっかけが みんなそれぞれあり、
胸をときめかせたり、緊張しながらきてくれていたのだろう。
わかいわたしはそうした心理を想像できず、
ただ淡々と、新入会してくれた会員さんをおしえていた。
プールにかようだけでドラマがあるなんて、かんがえもしなかった。
『水を縫う』をよんでいて、この一ヶ所だけは胸にひびいた。

この本には、自然描写がよくでてくるけど、
著者が日常的に自然とせっしているとはおもえない。
 九月になってからというものなぜか雨ばかり降る。夏に入る前にきれいに刈っておいた雑草が、もう青々と茂っている。

「夏にはいるまえ」といから7月上旬か中旬だろう。
そんなときにかった草が、
9月に「青々と茂って」いるのはあたりまえだ。
夏の草は2週間で姿をかえる。
もっともらしく あたりまえのことがかかれていて興ざめした。

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posted by カルピス at 20:58 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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