『老人と海』(ヘミングウェイ)の新訳がとりあげられていた。
『老人と海』は、福田恆存氏による訳がよくしられ、記事によると、
「新潮文庫の海外作品として、トップの発行部数を誇る。」
という。
新訳は、70編以上のヘミングウェイ作品を訳してきた高見浩さんが手がけた。担当編集者の大島有美子次長は「半世紀前の翻訳は、今よりも格段に情報量の少ないなかで行われた。どんな名訳であっても、時代が進むと、必然的に内容が古く感じられてしまう」と説明する。
そのとおりだろう。
翻訳には賞味期限がある、と村上春樹さんもどこかでかいていた。
わたしはまだ『老人と海』をよんだことがなく、
福田さんによる訳がどんなテイストなのかしらないけど、
今回の高見さんの新訳では、
「脱・マッチョ」路線がとられているらしい。
わたしは、高見さんの訳に、絶対の信頼をおいており、
今回の新訳をきっかけに、『老人と海』をよんでみる気になった。
マッチョぶりを警戒して『老人と海』に手をださなかった、
というのはウソだけど、よわさをこころえた主人公のほうが
わたしのこのみにあいそうだ。
高見浩さんによる訳を意識するようになったのは、
ピート=ハミルの『愛しい女』をよんでからだ。
あんまりすらすらおもしろくよめるので、
ほかのひとの感想もしりたいと、なにかの書評をよんだら、
原作よりも翻訳のほうがうまい、みたいな
ほめかたがしてあった。
英語と日本語ができるひとが、それぞれのことばでよんでの感想だ。
ひとりの感想をもちだして、だからすごい、
というのはいただけない方法だけど、
原作よりうまい、というのは、最大級のほめことばであり、
そのときから高見さんの訳にいちもくおくようになった。
高見さんは、トマス=ハリスのレクターシリーズも訳している。
ただ1冊、『羊たちの沈黙』だけは、菊池光さんがうけもっており、
おおげさな日本語にいらついていたけど、
これも数年まえに高見さんによる新訳がでた。
だれが訳すかで、作品の雰囲気はおおきくかわる。
高見浩さんによる新訳『老人と海』を、夏だけに、
夏やすみの必読書としてたのしみたい。
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