2020年08月15日

『「山奥ニート」やってます。』(石井あらた)

『「山奥ニート」やってます。』
(石井あらた・光文社)

和歌山県の山奥でくらす15人のニートたち。
ヒッピームーブメントのながれで、
日本各地にできたといわれる「共同体」は、
村から社会をかえよう、という運動だったけど、
この「山奥ニート」は、あまりはたらかず、
自分の時間をたいせつにしたい、というひとたちだ。
生活費としては、月に1万8000円ずつだしあうだけだ。
個人のたのしみでお酒をのむなら、それは別の出費になるけど、
月に2万円もかけずにすごせるのだから、
それ以上のお金をかせぐ必要はなくなる。
2万円くらいは、村でアルバイト(キャンプ場や梅の収穫など)
をすればなんとかかせげる。
貯金をきりくずしているひともいる。

ひきこもりの若者たちを支援するNPOが、
村でくらしてみませんか、とよびかけており、
著者の石井さんはそこの紹介で村にはいった。
そのうちに、町でのくらしにうまくなじめなかったひとが
だんだんあつまってきて、
いまでは15人が元校舎を改築した宿舎でくらしている。
生活費が2万円もかからないのは、家賃がタダだからだ。
そこでみんながなにをしているかというと、
朝おそくおきだしてきて、散歩をしたり畑仕事をしたり。
ゲームや本をよんですごすひともいる。
スケジュールがきまっているわけではなく、
なにをするのもそのひとの勝手だ。
食事も、とくに当番がきまっているわけではなく、
なんとなくつくりたいひとがつくる。

この本は、こんなくらしもありますよ、という記録であり、
いまのメンバーたちは、このまま「山奥ニート」をつづけてもいいし、
社会ではたらく気になれば、村をでてもいい。
「山奥ニート」のくらしで自信をつけ、
村にくるまえとはずいぶんかわった、というひともおおい。
価値観があわなければ、だれにでもできるくらいしではないけど、
都会で生きづらかったひとには、
村の自然や人間関係が いい環境となるようだ。

わかいころ、わたしも山奥の村で一年間くらしたことがある。
農業研修という形なので、あまりはたらかず、というわけにはいかず、
やすみは10日にいちどくらいしかなかった。
でも、村でのくらしはなかなかたのしく、
「山奥ニート」をよんでいると、
そんな村でのくらし あるあるがなつかしかった。
村のひとたちには、わかいというだけでかわいがってもらえるし、
山奥の村は、夏でも夜はすずしくて快適だった。
ひどいあつさにくるしまなくてもいいだけ、町よりもすごしやすい。
あの村で、ほとんどはたらかなくてもいい、といわれたら、
わたしはなにをしてすごすだろう。
本をよんで、散歩をして、すこしは畑もいじるだろうか。
けっきょく、いまでもできるくらしだけど、
それを山奥でやるからいごこちがいいのだろう。
ニートは山奥でやるにかぎる。

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posted by カルピス at 17:32 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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