2021年06月28日

地理的な記録においても、歴史の知識がかかせない

わたしが梅棹忠夫さんの本ですきな探検記をあげると、
『モゴール族探検記』
『東南アジア紀行』
『カイバル峠からカルカッタまで』
となる。
いずれも探検や旅行記なのだけど、
地理的な記述ばかりではなく、
探検している土地の歴史についても おおくかたっている。
はじめによむときは、しらない土地の歴史なんて、
いくらくわしくかかれていても、わたしにはたいくつなだけだった。
それが、なんどかよむうちに、ジワジワとおもしろくなってくる。
たとえ地理的な探検記であっても、
歴史あっての地理ということが ようやくわかってきた。

たとえば『モゴール族探検記』は、
モゴール語をはなすひとたちをもとめ、
アフガニスタンのちいさな村にとどまり、
梅棹さんたちのグループがフィールドワークをする記録だ。
その土地にのこっているモゴール語をしらべていくと、
アフガニスタンの奥地に、どういういきさつで、
モゴール族(モンゴル族)がたどりついたのかがわかってくる。
そして、いま彼らがどういう境遇にあるのかを
具体例をあげて梅棹さんは読者にしめし、
これからモゴール族というひとつの民族が、
どう うごいていくのか、推理をかさねていく。

『カイバル峠からカルカッタまで』は、
アフガニスタンのカーブルから、インドのカルカッタまで、
梅棹さんが2人のアメリカ人学者といっしょに、
フォルクスワーゲンにのって旅をした記録だ。
梅棹さんはひざのうえにタイプライターをのせ、
車ではしりながら、窓からみえるけしきを記録していく。
アフガニスタンからインドへの道は、
西からきた征服者が なんどもとおってきた道だ。
梅棹さんは、その歴史を紹介しながら、
どうじに地理的な風景のうつりかわりにも目をくばる。

『東南アジア紀行』は、日本からもっていった車で、
タイ・カンボジア・ベトナム・ラオスをまわっている。
この本もまた、それぞれの国の歴史について おおくかたられている。
日本やタイでかった本を車につみ、梅棹さんは移動しながら
いまはしっている土地の情報を本からえている。
効果的に知識をえる方法として、梅棹さんは
このスタイルを移動図書館と名づけ、
目のまえにあらわれた景色を記録していった。
そして、しばしば歴史的な事件について、
おおくのページをさいて紹介している。

探検記というと、地理的な発見におもきがおかれがちだけど、
梅棹さんはそこに歴史の知識をもちこむことで、
ふかみのある記録となっている。
地理的な探検をひくくみるつもりはないけど、
梅棹さんのつよみは、歴史への視点もまじえながら
地理的な発見を記録できる点にある。
基礎的な教養として 歴史をおさえることが、
たとえ地理的な記録においても必要なことが、
梅棹さんの探検記をよむとよくわかる。

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posted by カルピス at 22:16 | Comment(0) | 梅棹忠夫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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