藤井聡太さんのつよさを、永世名人の谷川さんが分析する。
将棋の本というと、棋譜がいくつもならび、
とりつきにくそうな印象があるけど、
この本は、さいごのほうに、すこしだけ棋譜がでるだけだ。
谷川さんは、データーを駆使して、
藤井さんのつよさにせまろうとする。
たとえば、藤井さんの年間勝率は8割4分で、
それをコンスタントに4年つづけることがいかにすごいかを、
谷川さんはほかの棋士とくらべて説明する。
大山・中原など、有名な棋士が活躍した時代、
羽生世代、そして藤井さんの登場と、
いまにつらなる将棋界のながれを俯瞰できるのは、
第一線の棋士でありつづける谷川さんならではだろう。
藤井さんは、連勝記録や最年少記録などに価値をおいてない。
藤井さんは、自分がつよくなることで、
将棋の真理にせまりたいとねがっており、
だからこそ、かった・まけたに一喜一憂するのではなく、
いい内容の将棋をさそうとする。
自分も棋士である以上、谷川さんだって
ほかの棋士を手ばなしにほめたりはしたくないだろう。
谷川さんがこの本をかいたのは、
藤井さんの将棋観に共感するところがあるからではないか。
糸井重里さんが、「今日のダーリン」のなかで
ポルシェがくるのか、ベンツがくるのかってね。
そしたら、どっちでもなくて‥‥ジェット機だった!
という比喩を紹介している。
つよいのはわかっている。でも、どれだけつよいかは、
ふだん将棋をささないものにはわかりにくい。
「ポルシェでなくジェット機」というのは
圧倒的につよいのだとイメージしやすい。
いまの名人である渡辺明さんは、藤井さんのつよさについて
いままでもタイトル戦で負けたことはありますけど、今回の棋聖戦のような負け方をしたことはありません。自分がまったく気づいていない想定外のことが起きまくっているんです
名人としてのプライドにとらわれず、
藤井さんがどんなにけたはずれのちからをもっているかを
おどろきとともに、客観的にかたっている。
A1の発達は、人間のかんがえがおよばないところまでさきをよみ、
たしかにつよいけど、血のかよってない将棋、
みたいなイメージをわたしはもっていた。
でも、いまの将棋界は、おおくのトップ棋士がA1をとりいれ、
A1の存在なしにはかたれなくなっている。
A1の進化と藤井さんの登場により、将棋界は新たな時代を迎えた
と谷川さんはかんじている。
相手にかつためではなく、将棋の真理にちかづくために、
藤井さんはつよくなろうとする。
結果として、トップ棋士との対戦がおおくなり、
藤井さんは、これからもさらにつよくなっていくだろう。
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