(ディーリア=オーエンズ・友廣純:訳・ハヤカワ文庫)
1950〜60年代の、ノース=カロライナ州にある湿地帯が舞台。
暴力をふるう父親が原因となり、母親・4人の兄弟、
そしてさいごには父親自身も家をでてゆく。
のこされた6歳の少女カイアは、ひとりで生きなければならなかった。
クツがないのではだしであるきまわり、家にはたべものもない。
唯一の理解者であるジャンピンに、湿地でとった貝を
彼のお店で食糧や必需品と交換してもらう。
給食につられ、学校へもいってみるが、ほかの子どもたちの
からかいに我慢できず、いちにちでやめてしまった。
そんなカイアが、どうやって生きのびるかにわたしは胸をあつくする。
湿地でのくらしはきびしく、孤独ではあるものの、
動植物のいきいきとしたようすが カイアのこころをささえる。
鳥や貝、虫や草花とともにカイアは生きて、
彼女はしだいにすぐれた自然観察者としての感性をそなえてゆく。
湿地でおきた殺人事件にカイアがまきこまれる。
カイアは湿地でくらす異端者として差別されており、
まわりからの偏見が彼女の立場をあやうくしていく。
ものがたりの後半は、法廷ものとしても興味ぶかい。
はたして彼女は事件にかかわりがあったのか。
この本をよみおえると、わたしはふかい満足感にひたった。
これだけの作品にであえたよろこび。
600ページを3日間でよみおえる。
わたしは本をよんでいるあいだ ずっとカイアによりそい、
彼女の目をとおして湿地のゆたかな自然をおもう。
動植物の生態には、かならずなんらかの理由があり、
人間のおこないもまた、種の保存という法則から説明がつく。
カイアはホタルのようにオスをさそいこみ、引導をわたす。
本があまりにもすばらしかったので、
ちょうどアマゾンプライムの対象だったこともあり、
映画化された作品もみた。
がんばって、なんとかまとめてはあるものの、
原作のよさをじゅうぶんに再現したとはいいにくい。
湿地のうつくしさ、カイアの孤独が、
あまりつたわってこなかった。
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