近所の本屋さんが、きょねんの秋から改装工事にはいっていた。
4月24日に、ようやくまたお店がはじまりほっとしている。
さっそくいってみると、店内はかなりかわり、べつのお店のようだ。
「すごせる書店」をめざす、と新聞で紹介されていた。
改装まえは、雑貨のスペースがじわじわとふえ、
それにともない本棚がへっていたのが不満だった。
あたらしいお店は、蔵書が3万冊ふえ22万冊になるという。
やみあがりだったのできのうはみじかい滞在にとどめ、
シャルロッテ=リンクの『罪なくして』の上下だけをもとめた。
セルフとなったレジで2640円をしはらう。
それにしても本の値段がたかくなった。
『罪なくして』は300ページほどの作品なのに、
税別それぞれ1200円もする。
すこにまえなら1000円程度におさまっただろう。
輸送費の値あがりや、そもそも本の原料である紙がないと
『本の雑誌』にかかれていた。
これもそれも、みんなプーチンがわるのだろう。
成瀬あかり氏の活躍以来、今年の夏をなんとかにささげる、
というのは手あかのついた表現になってしまったけど、
わたしはこのいちねんをカリン=スローターにささげたいとおもう。
はじめてよんだ『暗闇のサラ』におどろいてしまい、
アマゾンであらたに7冊を注文した。
なかには700ページにたっする作品もあり、
わたしのよむスピードでは、その1冊だけでも1ヶ月かかりそうだ。
スローターの作品には、「グラント郡シリーズ」と
「ウィル・トレント」シリーズ、それにシリーズ外作品がある。
全部で20冊をこえるらしく、成瀬のように夏だけではとてもたりない。
わたしの2025年度をかけた大事業として位置づけるわけだ。
ちょうどこのいちねんは、わたしが職場ですごすさいごの年でもあり、
定年までの月日をささげるにふさわしい気がする。
2025年04月29日
2025年02月28日
くちなおしにキャロル=オコンネル
『おすすめ文庫王国』ですすめられていた
『炒飯狙撃手』(張國立)をよんでみる。
あぶない場面になると、炒飯をつくって危機をのりこえる、
みたいな紹介があったけど、じっさいは、
さほど炒飯にスポットがあたっているわけではない。
わたしには、どこがおもしろいのか
理解しづらい作品だった。
こんなときには、くちなおしに
すぐれたミステリーがよみたくなる。
キャロル=オコンネルの『ルート66』を手にとった。
マロリーの通報後、20分もたってから
州警察のわかい警官がパトカーからおりてきた場面。
わたしのツボにドンピシャではまるうまさだ。
オコンネルの描写には無駄がない。
それでいて、あそびごころにみちている。
それ以外にはないとおもわせる絶妙な角度から、
人物像を的確にいいあらわす。
よんでいるだけでここちよくさせてくれ、
そのうえストーリーもまた格別にうまいのだから たまらない。
オコンネルが特別なのかとおもっていたら、
このまえよんだ『暗闇のサラ』(カリン=スローター)もすごかった。
すんなりとよみすすめるのが困難なほど、
きびしい緊張感をたもちながら読者をふりまわす。
こんな作品にであえたしあわせに感謝する。
日本の、そしてアジアのミステリーは、
欧米のレベルから、まだまだとおくはなされているのでは。
『炒飯狙撃手』(張國立)をよんでみる。
あぶない場面になると、炒飯をつくって危機をのりこえる、
みたいな紹介があったけど、じっさいは、
さほど炒飯にスポットがあたっているわけではない。
わたしには、どこがおもしろいのか
理解しづらい作品だった。
こんなときには、くちなおしに
すぐれたミステリーがよみたくなる。
キャロル=オコンネルの『ルート66』を手にとった。
マロリーの通報後、20分もたってから
州警察のわかい警官がパトカーからおりてきた場面。
彼は、何試合かで勝利を収め、独力で勝ったと思いこんでいるアスリートの自信を漂わせていた。なお悪いことに、彼はゆったりしたタイプだった。車から降り、食堂までの5、6歩の長旅にそなえて帽子をかぶる
「あのフォードのトランクを開けて欲しいの」マロリーは言った。
ホフマンは優しげな、見下すようなほほえみを見せた。まるで幼稚園を訪問して、親切なおまわりさんを演っているようだ。
わたしのツボにドンピシャではまるうまさだ。
オコンネルの描写には無駄がない。
それでいて、あそびごころにみちている。
それ以外にはないとおもわせる絶妙な角度から、
人物像を的確にいいあらわす。
よんでいるだけでここちよくさせてくれ、
そのうえストーリーもまた格別にうまいのだから たまらない。
オコンネルが特別なのかとおもっていたら、
このまえよんだ『暗闇のサラ』(カリン=スローター)もすごかった。
すんなりとよみすすめるのが困難なほど、
きびしい緊張感をたもちながら読者をふりまわす。
こんな作品にであえたしあわせに感謝する。
日本の、そしてアジアのミステリーは、
欧米のレベルから、まだまだとおくはなされているのでは。
2025年01月09日
『愛おしい骨』キャロル=オコンネル
『愛おしい骨』
キャロル=オコンネル・務台夏子:訳
創元推理文庫
いやー、キャロル=オコンネル、いつもながらすごい。
ストーリーが複雑にいりくみ、さいごのさいごまで
どこにつれていかれるのかわからない。
よみおえてしばらくは、至福の時間をすごせたよろこびにひたった。
ミステリーのおもしろさを堪能させてくれる一冊だ。
務台夏子氏の訳もすばらしく、よくこなれた日本語にたすけられ、
オコンネル作品の奥ぶかさを ぞんぶんに堪能できた。
作品についていろいろかきだしてみたものの、
わたしには、この作品をかたるちからはないようだ。
川出正樹氏がみごとな解説をよせられているので、
その引用をもってこの作品の紹介としたい。
キャロル=オコンネル・務台夏子:訳
創元推理文庫
いやー、キャロル=オコンネル、いつもながらすごい。
ストーリーが複雑にいりくみ、さいごのさいごまで
どこにつれていかれるのかわからない。
よみおえてしばらくは、至福の時間をすごせたよろこびにひたった。
ミステリーのおもしろさを堪能させてくれる一冊だ。
務台夏子氏の訳もすばらしく、よくこなれた日本語にたすけられ、
オコンネル作品の奥ぶかさを ぞんぶんに堪能できた。
作品についていろいろかきだしてみたものの、
わたしには、この作品をかたるちからはないようだ。
川出正樹氏がみごとな解説をよせられているので、
その引用をもってこの作品の紹介としたい。
自信をもって断言しよう。およそ〈物語〉が好きな人であるならば、この本を読まないという選択肢はない。ミステリに興味がないとか、翻訳小説が苦手だとか、そんな些細なことは関係ない。この小説の懐は、とてもとても深いのだ。
2024年12月28日
『ミステリーしか読みません』だったこの一年
すこしまえに『ミステリーしか読みません』
(イアン=ファーガソン)という本をよんだ。
とてもよくできたミステリーだったけど、
かきたいのはその内容ではなく、
ことしのわたしの読書傾向をよくあらわしているから
ひきあいにだしたくなった。
ことしよんだ本は52冊で、そのうち30冊がミステリーだ。
そしてその全部が海外ミステリーとなった。
北欧やイギリスの、重厚なミステリーをよむと、
日本の小説ではものたりなくなってくる。
心理描写がよわく、よみごたえがない。
新聞の書評にのっていた何冊かの日本の小説をよんだけど、
書評がすすめるほどには、おもしろくかかれていなかった。
とはいえ、海外ものならどれもいいわけではもちろんない。
レイフ=GW=ペーションベッグストレーム警部シリーズは、
数冊まではおもしろくよめたものの、
だんだんと 警部のとんでもなさがハナについてきた。
ジル=ペイトン=ウォルシュのイモージェン=クワイシリーズも、
はじめの2冊にくれべ、3冊目の『貧乏カレッジの困った遺産』は
だいぶおちるので、もうこれからは手をださない(かもしれない)。
いまいちばんすきなシリーズはエリー=グリフィスの
ハービンダー=カー刑事ものとなる。
アマゾンのレビューをみると賛否がわかれており
(否のほうがおおい)、このシリーズのおもしろさは、
かなりのミステリーずきでないと理解されないだろう。
いわば、「読者をえらぶ」ミステリーであり、
いたるところにちりばれまれた わたしむきのわらいに
なんどもほくそえむ読書となる。
つぎの作品がたのしみでならない。
ことしの10冊をえらんでみると、
・『窓辺の愛書家』エリー=グリフィス・創元推理文庫
・『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈・新潮社
・『カラハリが呼んでいる』マーク=オーエンズ・ディーリア=オーエンズ・ハヤカワノンフィクション文庫
・『ザリガニの鳴くところ』ディーリア=オーエンズ・ハヤカワ文庫
・『償いの雪が降る』アレン=エスケンス・創元推理文庫
・『黄昏に眠る秋』ヨハン=テオリン・ハヤカワ文庫
・『クリスマスに少女は還る』キャロルオコンネル・創元推理文庫
・『悪魔が唾棄する街』アラン=パークス・ハヤカワ文庫
・『つまらない住宅地のすべての家』津村記久子・双葉文庫
・『誘拐犯』シャルロッテ=リンク・創元推理文庫
(イアン=ファーガソン)という本をよんだ。
とてもよくできたミステリーだったけど、
かきたいのはその内容ではなく、
ことしのわたしの読書傾向をよくあらわしているから
ひきあいにだしたくなった。
ことしよんだ本は52冊で、そのうち30冊がミステリーだ。
そしてその全部が海外ミステリーとなった。
北欧やイギリスの、重厚なミステリーをよむと、
日本の小説ではものたりなくなってくる。
心理描写がよわく、よみごたえがない。
新聞の書評にのっていた何冊かの日本の小説をよんだけど、
書評がすすめるほどには、おもしろくかかれていなかった。
とはいえ、海外ものならどれもいいわけではもちろんない。
レイフ=GW=ペーションベッグストレーム警部シリーズは、
数冊まではおもしろくよめたものの、
だんだんと 警部のとんでもなさがハナについてきた。
ジル=ペイトン=ウォルシュのイモージェン=クワイシリーズも、
はじめの2冊にくれべ、3冊目の『貧乏カレッジの困った遺産』は
だいぶおちるので、もうこれからは手をださない(かもしれない)。
いまいちばんすきなシリーズはエリー=グリフィスの
ハービンダー=カー刑事ものとなる。
アマゾンのレビューをみると賛否がわかれており
(否のほうがおおい)、このシリーズのおもしろさは、
かなりのミステリーずきでないと理解されないだろう。
いわば、「読者をえらぶ」ミステリーであり、
いたるところにちりばれまれた わたしむきのわらいに
なんどもほくそえむ読書となる。
つぎの作品がたのしみでならない。
ことしの10冊をえらんでみると、
・『窓辺の愛書家』エリー=グリフィス・創元推理文庫
・『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈・新潮社
・『カラハリが呼んでいる』マーク=オーエンズ・ディーリア=オーエンズ・ハヤカワノンフィクション文庫
・『ザリガニの鳴くところ』ディーリア=オーエンズ・ハヤカワ文庫
・『償いの雪が降る』アレン=エスケンス・創元推理文庫
・『黄昏に眠る秋』ヨハン=テオリン・ハヤカワ文庫
・『クリスマスに少女は還る』キャロルオコンネル・創元推理文庫
・『悪魔が唾棄する街』アラン=パークス・ハヤカワ文庫
・『つまらない住宅地のすべての家』津村記久子・双葉文庫
・『誘拐犯』シャルロッテ=リンク・創元推理文庫
2024年11月16日
本屋さんがない町はさみしい
すんでいる町から本屋さんがなくなり、
さみしくなった、みたいな記事を、
新聞やネットでときどき目にする。
そりゃ残念だろーなー、とおもってよんできたけど、
わたしにも、そんな事態がいよいよふりかかってきた。
新装開店のため、4ヶ月だけの休業なので、
正確には本屋さんがなくなったわけではないとはいえ、
毎週のように足をはこんでいた店へいけなくなるのは、
ずいぶんさみしい生活となる。
本をかわないまでも、本棚をながめながら店をぶらつくのは、
わたしにとって大切な時間だった。
新刊(文庫だけど)のミステリーをさがしたり、
毎月中旬に、『本の雑誌』をかいもとめたり、
それといっしょに『熱風』をただでもらったり。
それらの機能がばっさりときりはなされてしまった。
ネットで注文すればいいので、本が手にはいらないわけではないけど、
それはそれ、これはこれ、だ。
リアル本屋さんの存在が、どれだけ生活をうるおしてくれていたかを、
いまさらながらおもいしらされている。
このお店が20年まえにできたときは、
ほかの本屋さんにくらべゆったりとしたレイアウトが新鮮だった。
検索用の末端が何台もおかれていて、
ずいぶんゴージャスにかんじたのをおぼえている。
それから20数年がたち、本屋さんが新装工事にはいるまえには、
雑貨をあつかうスペースがだんだんふえていた。
本屋さんなら、そんなものをならべるより、
もっと本棚を充実させてくれたらいいのに、とおもっていた。
こんどお店がはじまるときは、どんな姿をみせてくれるだろうか。
さみしくなった、みたいな記事を、
新聞やネットでときどき目にする。
そりゃ残念だろーなー、とおもってよんできたけど、
わたしにも、そんな事態がいよいよふりかかってきた。
新装開店のため、4ヶ月だけの休業なので、
正確には本屋さんがなくなったわけではないとはいえ、
毎週のように足をはこんでいた店へいけなくなるのは、
ずいぶんさみしい生活となる。
本をかわないまでも、本棚をながめながら店をぶらつくのは、
わたしにとって大切な時間だった。
新刊(文庫だけど)のミステリーをさがしたり、
毎月中旬に、『本の雑誌』をかいもとめたり、
それといっしょに『熱風』をただでもらったり。
それらの機能がばっさりときりはなされてしまった。
ネットで注文すればいいので、本が手にはいらないわけではないけど、
それはそれ、これはこれ、だ。
リアル本屋さんの存在が、どれだけ生活をうるおしてくれていたかを、
いまさらながらおもいしらされている。
このお店が20年まえにできたときは、
ほかの本屋さんにくらべゆったりとしたレイアウトが新鮮だった。
検索用の末端が何台もおかれていて、
ずいぶんゴージャスにかんじたのをおぼえている。
それから20数年がたち、本屋さんが新装工事にはいるまえには、
雑貨をあつかうスペースがだんだんふえていた。
本屋さんなら、そんなものをならべるより、
もっと本棚を充実させてくれたらいいのに、とおもっていた。
こんどお店がはじまるときは、どんな姿をみせてくれるだろうか。