2021年07月14日

『プロヴァンスの贈りもの』ストーリーはベタでいい

「音楽遊覧飛行」(NHK-FM)の
映画音楽ワールドツアーをきいていたら、
紺野美沙子さんが『プロヴァンスの贈りもの』を紹介していた。
南フランスでワイナリーをいとなむ男性がなくなり、
アメリカにすむ青年が遺産をひきつぐことになった。
ビジネス界でバリバリにはたらいていた青年が、
ワイナリーをおとずれると、おさないころ、
ここですごした記憶がよみがえってくる。
南フランスでのおちついたくらしが気にいり、
そのうち、レストランでであった女性にひかれる。
ラジオをきいていて、はずかしくなるくらいベタなはなしだ。
外国人だから、こんなストーリーでもゆるされるけど、
日本人がもしこれほどゆるい小説をかいたら、
おまえはハーレクインかと、ボロクソにいわれそうだ。
監督がリドリー=スコット、主演がラッセル=クロウなので、
それなりの作品にしあがっているのだろうけど、
いかにもよくありそうなはなしで、
お手がるなあらすじをおもいついた瞬間、
いっちょあがり、とさけんだ監督の声がきこえてきそうだ。
うつくしい自然があり、いい俳優がいて、
舞台がワイナリーとくれば、ヒットする条件がそろっている。
なにかをかたらせるのに、ワインくらいぴったりの酒はない。
これがウイスキーやビールだと恋愛ものにならないし、
ジンやウォッカでは、特殊な恋愛でないとおさまりそうにない。

わたしがすむ地方にも、いくつかワイナリーがあり、
にたようなストーリーはつくれそうだけど、
南フランスという土地がもつ独特のイメージと、
フランス産のワインという老舗があいてでは、
はじめから勝負にならない。
日本でワインをとりあげると、
日本におけるワインづくりのむつかしさなど、
どうしてもよけいなものがくっついてしまう。
シンプルにきめるには、やはり土地のもの、
たとえば日本酒やミソづくりにおちつくのではないか。

『プロヴァンスの贈りもの』にかぎらず、
紺野さんが紹介する映画のストーリーをきいていると、
恋愛もの、学園もの、どれもおもしろそうだけど、
あらすじ じたいは これでもかというぐらい、ベタなものがおおい。
はじめの段階では、シンプルなストーリーでじゅうぶんなのだろう。
つくりあげる過程でいろいろくわえ、作品にふかみをもたせればいい。
ベタでいいんだ、奇をてらう必要はないんだ、というのが
『プロヴァンスの贈りもの』でえた教訓だ。
作品をまだみてないので、ぜんぶ推測にすぎないけど。

posted by カルピス at 21:24 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月28日

「プロフェッショナル 仕事の流儀」での庵野秀明さん

「プロフェッショナル 仕事の流儀」が
エヴァンゲリオン総監督の庵野秀明さんをとりあげていた。
わたしはエヴァンゲリオンをみたことがなく、
内容についてもまったくしらない。
庵野さんは「ナウシカ」で巨神兵の場面をかいたひと、
そして漫画家の安野モヨコさんの配偶者、
ということだけをしっていた。
安野さんによる漫画、『監督不行届』にでてくる庵野さんは、
仮面ライダーのベルトをあつめていて、おかしばっかりたべて、と
すこしかわったおじさん、くらいにえがかれている。
ただ庵野さんがとるスペシューム光線のポーズが
すごくきまっており、これはそうとうなオタクだとおもった。

番組での庵野さんは、口調はおだやかでも、
とらえどころがなく、変人というか、奇人だった。
エヴァンゲリオンの4作品目にとりくみ、
これでエヴァンゲリオンをおわらせるはずなのに、
スタッフがあつまる合宿や会議で なにもはなさない。
シナリオがあがってこず、ようやくできても、
なんか気にいらないと、時間がないなか、
はじめからつくりなおしたりする。

庵野さんがはなしている内容は、わたしには理解できない。
宮崎駿さんが映画をつくるときのたいへんさを、
長期間の取材で せまった番組を いくつかみたことがある。
こまかなことはわからないまでも、
作品をしあげていくときのくるしみは共感できるし、
宮崎さんがはなす内容もすんなり頭にはいってくる。
でも、庵野さんの場合、なにをしようとしているのか、
わたしにはさっぱりわからない。
スタッフになにをもとめ、どうしてほしいのかも口にしない。
「アングルと編集だけで(アニメも実写も)おもしろくなる」と
延々といろんなアングルをスタッフにためさせ、
自分でもスマホをかまえ、いい角度をさがしはじめる。
まわりのスタッフは、とまどいながらも
庵野さんのおもいつきに ついていかなければならない。

庵野さんは具体的な形がみえているわけではないけど、
表現したいものの方向性について確信がある。
ただ、どうやってそこへたどりつけばいいのがみえてこない。
延々と時間をかけ、自分が納得できるものをおいもとめる。

作品がなんとか完成した。
庵野さんもスタッフも、満足できるしあがりのようだ。
試写会の席でスタッフに
「ありがとうございました」と感謝をつたえ、
でも自分は作品をみないで会場をでてしまう。
いつもみないという。完成したら、
つぎの作品をつくるだけだから。

番組での庵野さんをしるうちに、
『エヴァンゲリオン』をみたくなった。
全4作をはじめからおいかけようという気になる。
庵野さんが命をけずるようにしてつくった作品を、
わたしはどうかんじるだろうか。

わたしがよくきくラジオ番組の
「ラジオマンジャック」(NHK-FM)に、
エヴァンゲリオンでシンジ役をつとめる緒方恵美さんが
月2回、準レギュラーのようなかたちでかかわっている。
エヴァンゲリオンのファンが、
この番組に緒方さんがでているのをしると、
「緒方さん、そんなところでなにやってるんですか?」と
不思議がられるそうだ。
あのシンジ役をえんじるほどのひとが、
番組の企画でアホなことをしているのが意外なのだろう。
番組のメイン担当者である赤坂さんは、
エヴァンゲリオンをまったくしらないので、
緒方さんをいじくってあそぶのだけど、
それがエヴァンゲリオン ファンのひとたちには
神聖さをけがされる気がして、おもしろくないようだ。
赤坂さんたちと、いっしょになってあそぶ緒方さんは
さすがにプロの声優とおもわせる実力を さらっとみせる。

posted by カルピス at 21:29 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月16日

大塚康生さんのご冥福をおいのりします

ラジオがだれかの死をつたえていた。
『ルパン三世』『未来少年コナン』といっていたので
耳をすませる。アニメーターの大塚康生さんだった。

10代のころ、『未来少年コナン』にうちのめされたわたしは、
監督をつとめたのが宮崎駿さんだとしり、
宮崎さんがつくった作品や、宮崎さんの発言をおいかけた。
そうすると、どうしても大塚康生さんの名前が目にはいってくる。
大塚さんは、宮崎さんが東映動画にはいったとき、
指導する立場の先輩アニメーターだった。
『太陽の王子ホルスの大冒険』で作画監督をつとめ、
のちにテレビ版『(旧)ルパン三世』でも
作画監督としてかかわっている。
『ルパン三世』は、当時としては画期的な作品だったものの、
視聴率がひくく、後半からがらっと作風がかわった。
シリーズ前半は、アンニュイなルパンだったのが、
シリーズ後半では演出が宮崎さんと高畑さんにかわり、
げんきいっぱいにうごきまわる、陽気なルパンになった。
ルパンがのる自動車も、高級車のベンツSSKから
イタリアの大衆車、フィアット500になっている。
フィアット500は、大塚さんがじっさいにのっていた車だ。

『未来少年コナン』につづき、『ルパン三世カリオストロの城』でも
宮崎さんのもとで 大塚さんは作画監督をつとめた。
宮崎さんが、大塚さんのちからを必要としたからで、
でも大塚さんはいそがしい作画の現場からちょくちょくいなくなり、
どこかで油をうっていた、というはなしがよくしられている。
宮崎さんのとなりに机をかまえ、
宮崎さんが時間におわれてくるしんでいるのをみながらも、
たびたびぬけだすなんて、すごい。
宮崎さんの仕事ぶりは有名だけど、スタジオのなかには、
ずっとがむしゃらだったわけではないひともいたことが
わたしはなんとなくうれしかった。
わたしも がんばりがながくつづかないほうなので、
大塚さんの、そんな仕事への距離感をこのましくおもった。
あつく仕事をかたりながらも、ちゃんと手をぬくときもある。
大塚さんは、そんなおとなとしてのふるまいが板についている。
つつしんで大塚さんのご冥福をおいのりします。

posted by カルピス at 21:04 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月06日

『マイレージ、マイライフ』空港とホテルが恋しくなる

『マイレージ、マイライフ』
(ジェイソン=ライトマン:監督・2009年・アメリカ)

雇用主にかわり、その企業ではたらいているひとに
クビをつげるのがビンガムの仕事だ。
突然の解雇をつきつけられると、
ほとんどのひとがとりみだし、悪態をたれる。
その修羅場を、いかにのりきるかが
プロとしてビンガムにもとめられている。
つめたすぎない対応で、でも相手に現実を理解してもらう。

ビンガムは仕事がら、アメリカ全土をとびまわっており、
1000マイルを達成するのを目標としている。
映画には、コンパクトにつめられたカバンをさっそうとひいて、
空港から空港へ、そしてホテルへと、
気がるにうごきまわるビンガムの姿がよくでてくる。
ビンガムにとって空港やホテルは、
特別な場所ではなく、なれしたしんだ自分の居場所となっている。

新型コロナウイルスで、旅行にでられなくなったわたしは、
じつは映画のストーリーよりも、空港での景色や、
くつろいで飛行機にのるビンガムをうらやましくみていた。
飛行機をつかうからといって、
いつもスムーズにことがながれるとはかぎらない。
というか、飛行機にはアクシデントがつきもので、
天気や機体の整備、空港のストライキ、
理由がしらされないおくれなど、日常茶飯事といってよい。
わたしなんかは、やすい航空会社をつかうせいか、
出発時間のおくれは いつものことで、
スムーズにいくと かえっておどろいてしまう。
予定外のまち時間をつげられると、
たいくつして時間をもてあましてしまうけど、
ビンガムだったら クラブ会員の特権を最大限にいかし、
突然うまれた空白の時間をたのしむのだろう。

2年まえのタイ旅行では、予定していた飛行機が7時間30分おくれ、
あわせて11時間を関西空港ですごさなければならなかった。
航空会社から、軽食のクーポンがもらえたけど、
そんなものぐらいで11時間のひまはつぶせない。
空港内をあちこち散歩し、iPodをきき、本をよむ。
意識がマヒするのか、そのうちまつことになれてきて、
2、3時間などすぐにたってしまうほど、
まち時間の達人となっていた。

日本からの出発が半日おくれると、
とうぜんバンコクにつくのもそれだけずれこみ、
予約していたホテルにはいれなかった。
つかれたからだで空港からカオサンゆきの路線バスにのり、
ゲストハウスに朝はやくチェックインした。
屋台でたべた食事でお腹をこわし、
下痢と熱にひとばんくるしむおまけまでついていた。
そんなアクシデントをふくめて「旅」なのであり、
すぎてしまえば たいていのことはおもいでとなる。
空港と安宿を、もういちど日常の場としたい。

posted by カルピス at 21:34 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月03日

『ホワイトタイガー』わけがわからないけど、すごく魅力的

『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』
(カレン=シャフナザーロフ:監督・2012・ロシア)

ロシア映画『ホワイトタイガー』をみる。
「タイガー」は、もちろんドイツのタイガーI型戦車のことで、
ソビエトのT-34にのる戦車兵が主人公(ナイジョノフ)だ。
「ホワイトタイガー」という幽霊のような戦車の存在が
ソビエトだけでなく、ドイツ兵のあいだでもささやかれている。
いったいホワイトタイガーとは なにものなのか。
ナイジョノフは、戦車とはなしができる、といい、
彼がのる戦車は「ホワイトタイガー」に撃破され、
大ヤケドをおいながらも奇跡の回復をみせ、前線にもどってきた。
彼自身が幽霊のような存在にみえる。
ナイジョノフの頭にあるのは、
ホワイトタイガーをしとめることだけだ。
もう戦争がおわった、と上官が彼につげても、
「あいつをやきはらうまでは」と、
彼のなかでは戦争がおわっていない。

まえにみた『フューリー』は、
実存するタイガー戦車をつかっての撮影で、
タイガーとシャーマンのたたかいをリアルに再現していた。
この『ホワイトタイガー』も、タイガーのうごきがほんものっぽい。
車体のうしろに2つついているドラム缶みたいなマフラーから、
タイガーのうごきにあわせてしろい煙があがる。
T-34は群をなしてタイガーにたたかいをいどみながらも、
まったくいいところなく、つぎつぎに撃破されてしまう。
あんなにたくさんのT-34がでてくる作品は はじめてだ。
T-34は、タイガーがどこにかくれているのかつかめない。
ひくい車体のタイガーが みるからに不気味で、
ねらいうちされるT-34の恐怖がつたわってくる。
タイガーの乗組員はいちどもえがかれず、
まるでタイガー自身が意思をもった生物のようにみえてくる。
そこらじゅう泥沼になっている村にタイガーがかくれ、
ナイジョノフのT-34がしつこくおいまわす。
あんな地形では、戦車でなければうごけない。
ようやくタイガーをみつけ、しとめようと砲撃すると、
泥で砲身がつまっており、ラッパみたいに破裂してしまった。

さいごにヒトラーがでてきて、だれかにむかってかたっている。
みんなユダヤ人がきらいで、ソ連がこわくて、
その2つの問題を解決しようとした、とはなす。
ヨーロッパじゅうがのぞんだことなのだ、という。
ホワイトタイガーとは、いったいなにを象徴していたのだろう。
こんな作品をよくロシアがつくったものだ。

なんとも不思議な作品で、いちどみてもよくわからず、
もういちどみたけど、ますますわからない。
これはだれかの解説がほしい、とおもっていたところ、
飯森盛良さんによる 納得のいく記事をネットでみつけた。
https://www.thecinema.jp/article/89
わけがわからないけど、やたらと魅力的な『ホワイトタイガー』。
作品理解をたすけてくれるので、ぜひそちらもごらんください。

posted by カルピス at 10:16 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする