2012年08月23日

西部流「アメリカに勝つ方法」

オリンピックがおわったら、
こんどはU20女子W杯がはじまった。
「ヤングなでしこ」という愛称がつけられ、
テレビでもいい時間帯に試合が放映されている。
これまでU20(しかも女子)の大会が
こんなに注目をあつめたことはなかったのではないか。
「なでしこ」人気にあやかろうとして、
人気タレントを動員してのおまつりさわぎをみると、
あまりにもみえすいたもちあげ方にうんざりしてくる。
とはいえ、こうやって女子サッカーが人気をあつめることは、
宮間さんたちのねがいであることもまたたしかだ。
ニュージーランド戦からまじめにみるようになった。

わたしがもっとも信頼しているサッカージャーナリストの西部謙司が、
オリンピックでの決勝戦のあと、
「アメリカに勝つ方法」として下記の内容をメルマガにのせている。

アメリカがとってきた
これまでの戦術について整理しておくと、

・きょねんのW杯で日本にまけたことで
 日本のパスサッカーをお手本にしはじめる
・しかしなかなか成果をだすことができず、
 日本との試合でも機能しなかった
・それでまたもとにもどし、パワーを全面にだすようになる
・オリンピックまえにスウェーデンおこなわれた親善試合で
 日本に1-4と圧勝する

具体的には、アメリカは2人のフォワードと、
サイドにはる2人がたかい位置からプレッシャーにくるので、
日本がパスをまわせなくなっていたのが
オリンピックまえの状況だった。

西部さんがかんがえる「アメリカに勝つ方法」は
センターバックの間にボランチの阪口がおりるというものだ。
そうすれば5バックのようになり、
4人のアメリカにたいして数的優位をたもてる。
もしアメリカがもうひとりくわえてきたら、
日本は宮間か川澄がおりてくればよく、
さらにアメリカが人数をかけてくるなら、
最終的には日本はセンターフォワードをゼロにし、
2トップはサイドにはる。

これはバルセロナ方式なのだそうで、
ほかにもうしろでパスをまわしきるやり方が
男子ではすでにいくつもあるという。

西部さんは「やり方は簡単」とかかれているが、
ほんとにそんなにうまくいくものなのだろうか。
理論的にはつじつまがあっていても、
じっさいに日本にあった戦術かというと
わたしにはよくわからない。
どのチームでもこうした戦術をとれるわけではなく、
日本がパスサッカーを自分たちのスタイルとしているから
西部さんはこういう案をかんがえたのだろう。

アメリカとの決勝戦についての西部さんの評価は、
(うしろでパスをまわすことが)そこまで出来なかった。やろうとしている感じも見えましたけど、中途半端でしたね。
決勝では、アメリカが元気だった前半は中盤を飛ばしてロングボールを使っていました。低い位置で奪われたくないというリスクマネージメントです。戦術的には正解なんですけど、これでは進歩したとはいえないでしょう。アメリカの圧力に対して逃げているだけですから。

というもので、互角以上にわたりあった、と
一般にはおもわれているのに対し
かなり手きびしい評価だ。

日本的なサッカーを全面にだしながら、アメリカを相手に、
ほんとうにかちをねらえるようなチームがそだってくることを
たのしみにまちたい。

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2012年08月14日

しつこいけど女子サッカー「銀メダルおめでとう!」

NHKスペシャル
「なでしこジャパン涙と笑顔の初メダル」をみる。
彼女たちのすばらしさについて
もうなんどもかいてきたのに、
こういう番組をみるとまた胸があつくなって
ひとことふれたくなる。

アメリカに1-2でやぶれ、ロッカールームにひきあげてからも
くやしさからたちなおれない選手たちに、
「銀メダルおめでとう!」と
宮間と大野が大声でいいはじめたという。
それは、選手全員の気もちを代弁するものでもあった。
まけて残念ではあるけれど、
自分たちがこれまでにしてきたことを
ほこりにおもうというものだ。
そして、選手たちは笑顔で表彰式にのぞむことができ、
わたしは彼女たちのつよさに
またおどろかされることになる。

もちろん、どの競技の、どのメダルでも、
それぞれのおもいと価値があるわけだけど、
彼女たちの銀メダルほど「おめでとう」がふさわしいものはない。
W杯での優勝から、ずっとプレッシャーにさらされるなかで
オリンピックでの金メダルをめざし、
そしてアメリカを相手に最後まで自分たちのサッカーをみせつづけた。

選手たちが口にする
「最高の仲間と最高の舞台でプレーできてしあわせだった」を、
彼女たちの魅力にひきこまれた
おおくのひとがおなじようにかんじている。
仲間のためにプレーし、相手への気くばりもわすれない。
サッカーにおいて、笑顔とフェアプレーがどんなにすばらしいかを
おしえてくれたのも彼女たちだ。
彼女たちのサッカーをみることができ、
わたしはどれだけしあわせだったか。
「銀メダルおめでとう!」

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2012年08月10日

ありがとうサッカー女子代表

オリンピック女子サッカー決勝、日本対アメリカ。
1-2でアメリカにやぶれる。

おわってみれば、なんどもあった決定機に
きめることができなかったことがひびいた。
まあ、運をふくめてそれがサッカーであり、
代表チームがみせてくれた
彼女たちらしいパスサッカーとねばりづよいプレーは
たとえ優勝はできなかったとしても
最大級の賞賛にあたいする。
選手たちの献身的なプレーをみていると、
どんな結果もうけいれることができる。
そして、内容ではけしてアメリカにまけていなかった。

試合がおわると宮間はなきじゃくってピッチにすわりこむ。
その彼女を佐々木監督がことばをかけながらかかえおこす。
宮間はそのあともずっとチームメイトにだきついてなきくずれていた。
いつもは周囲への気くばりをたやさず、
相手チームへの敬意をかかさない宮間が、
きょうだけは自分の感情にまかせておもいっきりないている。
きのうのブログにかいたように、
18歳の宮間がすでにこころざしていた
「人のこころを良い方向に持っていけるようなプレー」を
彼女たちはきょうの試合でもみせてくれた。

表彰式でふたたび場内にあらわれたときに、
日本の選手たちはまえのひとの肩に手をおいて「汽車」をつくり、
とびきりの笑顔でとびだしてきた。
ピッチを行進するときも、
手をつないでうれしそうにジャンプしたり
スキップしたりしてすすむ。
このシーンでわたしは胸がいっぱいになった。
なんておおきな選手たちだろう。
敗戦から気もちをきりかえ、
大会に参加したチームと自分たちの健闘をたたえる。
残念な自分たちの気もちはどうあれ、
したをむいていじけた選手たちなんてだれもみたくない。
敗戦をひきずってがっかりしていたわたしは、
表彰式というはれの舞台にふさわしい態度がとれる
彼女たちのつよさにしびれた。
「よき敗者」というよりも、
これこそが「真の勝者」のふるまいではないか。

前回のオリンピック、そしてWカップでの優勝からつづいていた
女子代表チームの挑戦が、
これでひとまずおわりをむかえた。
これからはあたらしいメンバーが
別の目標にむかっていどんでいくことになる。
今回の大会でみせてくれた
代表チームの勇気ある挑戦に感謝し、
これからの活躍に期待したい。

つぎのW杯はカナダでひらかれる。
カナダか。いけない場所ではない。
カナダのスタジアムで
彼女たちを応援している自分をイメージする。

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2012年08月09日

「人のこころを良い方向に持っていけるようなプレーがしたい」という18歳の宮間あや

『サッカー批評』(57号)をみていると、
宮間あや選手へのインタビューがのっていた。

スタンドにきてくれたお客さんにたいする挨拶のこまやかさや、
仲間のためにはしることがたのしいという
女子サッカーならではの感覚が紹介されており、
宮間選手のプレーがなぜすぐれているかについて、
精神面での分析となっている。
私のすべてが出る、私のプレーのすべてを見て、生きていこうと思ってくれたり、つらいことがあっても頑張ろうとか、人のこころを良い方向に持っていけるようなプレーがしたいです。

これは、18歳の宮間あやがいったことばだという。

まるで宮崎駿監督が
どういうおもいをこめて作品にとりくんでいるかを
かたっているみたいだ。
18歳の少女がこんな志をかかげてサッカーをしてるなんて。

わたしは阪口選手がだいすきで、
彼女のプレーをみていると
こころが浄化されていく気がする。
なぜそういう気もちにさせられるのかが、
この宮間選手へのインタビューでわかった。
女子代表では、きっと
「人のこころを良い方向に持っていけるようなプレーがしたい」
とおもっている選手は宮間だけでなく
チーム全体の文化となっているのだろう。
たかい次元でプレーしている選手がいると、
それに触発されてチーム全体のレベルがあがる。
宮間みたいなひとがアニメ制作会社にいると
そこはジブリになるし、
介護事業所にいるとピピになる(ほんとか!)。
ユーロのイングランド対イタリアなんて、泣いちゃうくらい素晴らしかった。サッカーを知らない人にも伝わるものが、サッカーにはあると思うんです。

2006年のドイツW杯でブラジル戦にやぶれたとき、
中田英寿選手がピッチにたおれたままないていた。
私は中田選手より泣いていました(笑)。その後、テレビで引退を知ったときも3時間泣きましたけど。

その宮間がアメリカ戦をまえの会見で
「金メダルしかとりにきていない」
とはっきりいった。
アメリカもまた、日本をたおすことを目標に
W杯以来戦術をねっている。
ワンバックがいて、ソロがいて、モーガンがいる。
日本にも歴戦の勇者がそろった。
歴史と物語をもつ両者が、
オリンピックの決勝という舞台でふたたび全力をつくす。
決戦という名がこれほどふさわしい試合はない。
わたしにできることは、3時におきて応援するくらいだ。

posted by カルピス at 22:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 女子サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月07日

おめでとう日本女子代表、フランス戦の勝利。

オリンピック女子サッカー準決勝、日本対フランス。

前半の日本はパスがよくつながり
自分たちのペースで試合をすすめる。
フランスのプレッシャーもそうきびしくない。
ボールはもてるけどシュートまではいけなかった日本が、
宮間のセットプレーから大儀見がこぼれ球をきめる。
はじめてのシュートが得点につながった。

後半も、開始早々の3分に、これも宮間のフリーキックを
阪口がヘディングできめる。
こうなるとフランスはまえがかりにならざるをえず、
のこりの時間を日本はフランスの猛攻にさらされることになる。
フランスはロングボールをどんどんほうりこんできて、
たかさをいかそうとする。
日本はクリアーがせいいっぱいで、
すごい形相で必死にまもる。
のこり5分と、アディショナルタイムの4分は
とくにあぶない場面がおおく、
そのたびに奇跡的に難をのがれる。

なかなか笛をならさなかった審判が、
ようやく試合終了をつげる。
選手たちは歓喜の表情でピッチにあつまる。
キャプテンの宮間が涙をぬぐっていた。
阪口は佐々木監督の抱擁をスルーして
ピッチ上の選手たちにかけよったようにみえた。
ワールドカップのときは、ひとりういていた大儀見(当時は永里)が、
大野としっかりだきあってよろこびをわかちあっている。
どの選手もほんとうにうれしそうだ。
それだけこの試合がむつかしく、
そしてこの勝利が特別なものであったことがわかる。
ワールドカップ優勝からこのオリンピックまで、
選手と関係者がどれだけのプレッシャーとたたかっていたのかをおもうと
ほんとうにこの勝利がうれしい。

福元の好セーブ、熊谷と岩清水の鉄壁のセンターバック、
阪口と澤の頭脳的なボランチ、
川澄の守備と攻撃にわたる献身的なはしり。
そして宮間のすばらしいキャプテンシー。
このチームがわたしたちの代表ということを
わたしはとてもほこらしくおもう。
お膳だてがととのい、決勝はいよいよアメリカとの試合となる。
どちらがかっても、全力をだしつくす最高の試合となりそうだ。

posted by カルピス at 21:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 女子サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする