成田空港第3ターミナル野宿の記事がのった。
http://weblog.nojukuyaro.net/2015/06/3_8.html
なんのことかというと、野宿を愛するひとたちが
あたらしくできた成田空港第3ターミナルの施設内で
ひとばんすごしたときの報告だ。
まえには羽田空港での野宿体験をよんだことがある。
このとき、わたしは はじめ
飛行場の滑走路わきの草はらで 野宿をしたのかとかんちがいした。
あんなところで野宿するなんて、さすがに野宿野郎はすごいと
すっかり感心してしまったものだ。
映画『だれもしらない』で、飛行機がすきだった妹を、
羽田空港ちかくのはらっぱにうめた場面が
つよく記憶にのこっていたのだろう。
すこしかんがえれば、滑走路のちかくで野宿をさせてくれるわけがない。
そういうえたいのしれないグループの侵入に、
いちばん神経をとがらしているのが飛行場だろうし、
もしゆるされたとしても、ものすごくうるさいだろうから、
おちついてねむれそうにない。
今回の報告のおかしさは、
徹底的に野宿をするものの視点から、空港の施設が紹介されている点にある。
「野宿野郎」なのだから、あたりまえとはいえ、
ふつう空港についてなにかかくときは、
空港までの交通手段や 施設にはいっているお店の紹介になるとおもうけど、
野宿野郎はどうしたら快適にねむれるか、の一点にこだわっている。
夜遅くなると数少ないソファーは横になりたい人たちに押さえられてしまう。どうしてもソファーで寝たければちょっと早めに来て場所を取っておいたほうがいいだろう。
ソファーが取れなかったら、夜を明かす方法は、椅子に座ってテーブルに突っ伏して寝るか、椅子をいくつかくっつけて並べてそこに寝るか、床に寝るかぐらいになる。テーブルの上で寝るという猛者はこの日はいなかった。
まとめによると、
第3ターミナルは これまでに野宿した国内空港のなかで
「残念ながら一番だめな感じ」ということで、
時間があるなら第2ターミナルでの野宿をすすめている。
一般的な感覚ではピンとこないけど、
野宿のすきなひとにとって、大切な情報なのだろう。
わたしはこれまで空港で3回「野宿」したことがある。
1回目と2回目がタイのドンムアン空港で、
3回目もおなじくタイのスワンナプーム空港だ。
これは、わたしがタイの空港に特別な愛着をもっているわけではなく、
日本からの格安便が、ぜんぶ夜おそくバンコクにつくことによる。
夜しらない町をうごくよりも、空港ですごしたほうが安全だし お金もかからない。
しかし、ドンムアン空港は 深夜になるとひとけがなくなり、
ひとりですごすのはこころぼそかった。
床によこになったところでそうねむれるものではなく、
海外旅行の初心者という不安もあり、
空港内をうろついている時間がながかったようにおもう。
3回目のスワンナプーム空港は、
ほとんど空港用として寝袋とマットをもっていったので、
3回のなかではいちばんいごこちよくすごせた。
深夜になっても利用客がおおすぎず、すくなすぎもせず、
ほどよいひとけをかんじながらねむれる。
空港内には仮眠をとる施設もあるそうだけど、
ものすごくたかいそうだから、
あっさりチェックインカウンターのある階で ねてしまうのがおすすめだ。
野宿野郎による成田空港第3ターミナルでの野宿は、
編集長が つぎの日このターミナルをつかうことから企画されている。
編集長が飛行機にのるからといって、
なにもほかのひとまでついていかなくてもいいのに、
野宿愛好家たちの行動はどこかつかみにくいところがある。
ところでわたしは、ほんとうは 空港野宿についてかきたかったわけではなく、
べつの記事に感心したことを紹介したかった。
そこでは、自転車をこぐことでUSB機器を充電する、
なにやらむつかしそうな装置がつくられていた。
「ないからつくった」とある。
このことばは、編集長(かとうちあき氏)が、
創刊のときにもらした言葉でもあるそうだ。
「ないからあきらめる」のではなく、「ないからつくった」。
すばらしい。
マットがないからといってあきらめていては
さむくてねむれないわけだから、
コンビニなどでダンボールを手にいれなければならない。
「ないからつくった」は、野宿するものにとって、
きわめてあたりまえな発想なのだ。
編集長が第3ターミナルへいくからいっしょに野宿するのと、
「ないからつくった」は、ぜんぜんちがう精神だとおもうけど、
そんなちいさなことにこだわらず、とにかく野宿をしてしまうのもまたすばらしい。