2017年06月16日

もうひとつだった『本の雑誌 7月号』の特集「本好きのための旅行ガイド」

『本の雑誌 7月号』の特集は、「本好きのための旅行ガイド」。
活字中毒者は、どのような旅行をすればいいかを
座談会で提案してくれるという。
いかにもおもしろそうな企画だけど、残念ながらすべってしまった。
あまりにも漠然としたテーマすぎるのか、特集の焦点がさだまらない。
「本好き」と「旅行」をからめた
活字中毒者ならではの企画とならず、もったいなかった。

黒田信一氏による「旅のガイドブックガイド」がおもしろかった。
いくつもでているガイドブックについて「ガイド」したもので、
よくしられている「地球の歩き方」もでてくる。
黒田氏は、『地球の歩き方・中国自由旅行』の表紙に、
「一日1500円以内で旅ができる」とかかれていたのにひかれ、
現金2万円をもって中国へと旅だった。
1987年、黒田氏が32歳のときだ。
広州、上海、桂林、マカオと弾丸のように回って10日後、香港経由で東京に戻って来た。手元に残っていたのは、1万2000円であった。中国本土での交通費、宿泊代、飲食費、物価の嵩む香港での滞在費を差し引いてのこの残額。おおっ!と声をあげた。『地球の歩き方』は正しかったのである。

黒田氏によると、『地球の歩き方』のよさは、
紹介されている安宿の数がおおいことで、
弱点は、
「とにかく安あがりを主題としているために、
 お土産や食事の情報が貧弱な点だ」
としている。
これは、わたしの感想とまったく逆で、
以前はともかく 最近の「歩き方」は
たかいホテルと高級レストランの紹介がおおく、
やすく旅行をしようとするものにとって あまり役だたない。
なによりも、かなりかさばるし、おもたいしで、
このごろは必要な情報だけをコピーし、
メインのガイドブックは
ほかの出版社からえらぶようになった。
ネット時代となり、それ以前のガイドブックから
方針をかえていこうとするのは当然で、
これからますます なにかの情報に特化していくだろう。

黒田氏が中国をまわった1987年は、
くしくもわたしが中国を旅行した時期とかさなっている。
わたしも香港から広州にはいり、桂林をかすめて
雲南省にはいった。
「一日1500円」での旅行はほんとうに可能で、
もっとケチれば500円でも滞在できた。
正確な金額はおぼえていないけど、
田舎にいけば宿代が200円、食事は一食が100円あればたりるし、
バスでの移動はものすごくやすかった。
30年まえの中国は、まだ開放されていない地域がおおく、
広州でさえあかぬけない町におもえたのに、
2ヶ月ほど雲南省をまわって広州にもどると、
どれだけほかの町とちがう都会なのかにおどろいたものだ。
たとえば、広州以外の町では冷蔵庫をほとんどみかけず、
ぬるいビールがあたりまえだった。
冷蔵庫があっても、嗜好品をひやす場所ではなく、
あくまでも食品をくさらせずに保存するいれものだった。
中国は、あれから急激な発展をつづけ、
ニュースでながれる町の映像をみると、日本よりも都会にみえる。
1987年に中国を旅行しておいてよかった。

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2017年05月23日

『本の雑誌 6月号』での「山の本ベスト30」

『本の雑誌 6月号』は山の本を特集しており、
「山の本ベスト30」がえらばれている。
3人による座談会で、それぞれが5冊ずつ推薦するほかに、
3人が合意する15冊をはなしあう。それで合計30冊。
ひろく・ふかく目をくばられるので、
ベスト30をえらぶのに いいやり方だ。
山についての本にくわしくないわたしには
おすすめ本として ありがたいリストになっている。
この30作をおさえれば、日本と世界における、
それぞれの「山」がつかめるのではないか。

わたしとしては、本多勝一さんの『山を考える』をいれてほしかった。
この本におさめられている「パイオニア=ワークとはなにか」は、
なぜ山をのぼるかについて、ひとつのこたえとなっている。
山であれば なんでもいいわけではなく、
世界でいちばんたかく、だれものぼってないからこそ とうとい。
ヘリコプターをつかってでも山頂をめざせ。
酸素ボンベだろうがなんだろうが、
役にたつならなんでもつかえ、に
わかいころのわたしはしびれた。
「パイオニア=ワークとはなにか」が議論された1955年当時、
世界最高峰のチョモランマは
すでにイギリス隊によってのぼられていた。
そんな状況だからこそ「パイオニア=ワークとはなにか」を
論理的におさえる必要があった。
最高の目標が制覇されたあとで、登山家たちは
いったいなにをめざせばいいのか。

「山の本ベスト30」には、
純粋な登山をあつかった小説だけではなく、
旅行記や探検記もランクインしているので、
冒険論である『山を考える』がはいってもおかしくない。
おかしくはないけど、探検や冒険のベスト30は、
別の企画としてとりくんだほうが
それぞれがめざす目標を、よりはっきりさせられる。
「山の本ベスト30」に『山を考える』が顔をださなかったことで、
探検や冒険のベスト30企画が必要におもえてきた。

探検・冒険、それに旅行は、
どれもがおおきなかたまりを形づくっている。
そのなかでさらに海もの・山もの・空ものと
いくつかのジャンルにわかれているので、
全体をとらえるのはかなりむつかしそうだ。
ベスト30などのこころみは、ひとつのあそびとはいえ、
やるからには全力をかたむけて状況を整理してほしい。
冒険と探検を対象にした それぞれのベスト30を たのしみにしている。

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2017年04月15日

『本の雑誌 5月号』国語の教科書を作ろう

今月号の特集は、国語の教科書。
「国語の教科書を作ろう!」の座談会がおもしろかった。
国語の教科書のせいで、本がきらいになる生徒がおおいらしく、
それなら自分たちでつくったら、という企画だ。
「前後ぶった切ってここだけ読んだって、面白いわけ」ないので、

・短編で読みきれるものを載せる
・基本的には全編読ませる

という提案がでている。
途中までがおもしろければ、
そのさきは自分でさがしてよめばいいので、
かならずしも全編まるごと とはおもわないけど、
ショートショートや短編だったら、たしかにできる。

わたしの記憶にのこっているのは、
中学の教科書にのっていた
『野生のエルザ』と『一切れのパン』だ。
エルザは、シリーズをとうじ夢中でよんでおり、
自分のすきな本が、教科書にのっているという、
それだけでうれしかった。
『一切れのパン』は、ナチスにとらえられたユダヤ人が、
収容所につれていかれるまえに にげだし、
家までもどるはなしだ。
ある老人から、布きれにつつんだひときれのパンをわたされ、
どうしても我慢できなくなるまで、
このパンに手をつけてはいけない、とおしえられる。
ポケットにいれた そのパンをささえに 男は冷静さをたもちつづけ、
無事に家にもどる。
布にくるんだパンをとりだしてみると、
それはパンではなく、板きれだった。

パソコンで検索すると、わたしの記憶はだいたいあっている。
たくさんの感想がよせられているので、わたしとおなじように、
つよく印象にのこっているひとがおおいのだろう。
ただ、高校の教科書にのっていたとおもっていたけど、
じっさいは中学のときによんだみたいだ。
高校の教科書に、なんの記憶もないのはなぜだろう。
本ずきだったわたしにはものたりなかったのか、
あるいは純文学的すぎたのか。

教科書で生徒が本をすきになるだろうか。
村上龍さんの『69』は、
単純に 本のおもしろさをわかってもらえるとおもう。
斎藤美奈子さんの『妊娠小説』をとりいれたら、
小説だけでなく評論にふれるきっかけになるし、
妊娠をめぐる男たちのテキトーさは、社会科の教材としてもつかえる。
村上春樹さんの初期のエッセイは、
ノーベル賞候補のえらい小説家、みたいな、
あやまったイメージをとりさってくれるはずだ。
教科書は、きびしい検査にとおらなければならないので、
教科書らしくない教科書は、なかなかつくれないのかもしれない。
それにしても、まったくおぼえていないというのは ひどい。
じっさいに高校で国語をおしえている先生のはなしをききたい。

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2016年12月17日

おすすめ本の情報がほしい

本屋さんにでかけたら、土曜日のせいかお客さんでいっぱいだ。
レジにも行列ができ なかなかとぎれない。
クリスマスむけなのか、プレゼント包装をまつひとがおおい。
本がうれなくなってる、というのが
しんじられない光景だけど、
ほかに本屋さんがないから このお店にお客さんがくるともいえる。
たしかに本屋さんの数はこの数年でいっきにすくなくなった。

杉江由次さんが、web本の雑誌に連載ちゅうの
「帰ってきた炎の営業日誌」に、本がうれない状況をかいている。
 
通勤時の京浜東北線で本や雑誌を広げている人なんてほとんどいない。ホームにいるときからみんな手に持っているのはスマホだ。(中略)
 持ち運べなかったものが持ち運べるようになり、新たなエンターテイメントも現れ、でも時間は24時間しなかく、そして東京でも本は売れなくなった。スマホの中に入るか、スマホの中で購買意欲を煽るか、スマホでは味わえないものを作り出すか、スマホを使わない層に向けて作るか、スマホに飽きるのを待つか。
 毎日電車に乗るとついついひとり会議を開いてしまうが、いくら考えたって本が売れるわけではない。カバンから本を取り出す。この世に本という存在があることをみんなに思い出してもらうために。

わたしはスマホをほとんどつかわないものの、
アマゾンに本を注文するし、ブックオフへもよくでかけている。
本がうれないのは スマホのせいばかりではなく、
いろんな条件がかさなっての現象だろう。
自民党がこの世の春にひたっているように、
アメリカの次期大統領にトランプ氏がえらばれたように、
本がうれないのは、おおくのひとがそれをのぞんだからだ。

本のちからをしんじ、本をとりまく世界がすきで、
本の業界にはいった杉江さんは、
自分たちがいい仕事をすることで
本がうれない状況をかえたいとねがっている。
本の雑誌の年間ベストテンや、
おすすめ文庫王国のベストテンをきめる座談会で、
いちばん迫力のある発言をするのは営業の杉江さんだ。
その本のよさを、ちからづよくかたられると、
読者としては ぜひよんでみたくなる。
わたしがほしいのは、おもしろい本についての
信頼できる情報だ。
本づくりを企画するだけでなく、
すきな本、おすすめ本を杉江さん個人が発表していけば、
参考にしたい読者はおおいのではないか。
本の雑誌社につとめながら、自分の雑誌をつくるのはどうだろう。
40年まえ本の雑誌をたちあげた
目黒さんや椎名さんがそうしてきたように。

posted by カルピス at 20:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本の雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

『おすすめ文庫王国 2017』

『おすすめ文庫王国 2017』

総合ベストテンの発表だけでなく、
10部門にわかれての ジャンル別ベストテンが
文庫えらびの参考になる。
紹介されている文庫を、冬やすみまえにもとめて
やすみちゅうによむのが年末年始のたのしみだ。

ベストテンのほかにもよませる特集がいくつもある。
出版社をJリーグならぬBリーグ(文庫本リーグ)にみたて、
出版社べつに いちねんをふりかえる企画が 5年目をむかえた。
チーム(出版社)ごとにつけられている総評をみると、
どこがどんな本をどんな戦略のもとに
うろうとしたのかがわかる。
はじめはBリーグなんて冗談にすぎないとおもっていたけど、
こまかくよんでいくと、シーズン前半は好調だったのに、
終盤にはちからつきてガタガタになるなど、
出版社とサッカークラブは、かなりにかよった体質の組織だ。
というよりも、サッカーのシンプルなおもしろさが、
人間のいとなみのおおくでアナロジーをなりたたせるのだろう。

もうひとつわたしがすきな企画は、
都内大型2書店の文庫担当者が、
店の文庫うりあげベスト100をあげて
その年のうごきをふりかえるページだ。
うり場の工夫やしかけでずいぶんうりあげがちがうらしい。
書店員の熱意に世相がからまって、
そのとしのうりあげに反映される。
◯一ヶ月に一回書店に来る人ってなかなかいないですからね。
△僕らの当たり前が当たり前じゃありません。
◯本当の本好きじゃないとそうは書店に来ない。(中略)
△そこをどう掘り起こしていくかってところが書店員の腕の見せどころなんだけど(中略)

◯この新刊置くんだったら、売れる既刊本をいい場所に置いた方が絶対売れるだろうっていうのが・・・。
△ありますよね。
◯だからやっぱり新刊を絞ってほしいんです。
△ただ点数を揃えただけっていう版元の方がまだ多いですよね。

△一番安易にやっちゃうのは、売れている本を棚差しにしちゃう。(中略)
◯それやられると一番頭に来ます。部数少ないから棚差ししましたとか。(中略)
△そうすると売れない本がぶあーっと並んだ絶望的な平台が出来上がる。

あたらしくでた本を ただならべたらいいわけではないらしい。
本屋さんをぶらつくたのしさは、
こうした書店員さんの熱意にささえられている。

posted by カルピス at 22:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本の雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする