伊藤理佐さんのコラムが いつもすばらしくおもしろい。
ほんとうに、はずれがないので、
伊藤さんの担当する週がまちどおしい。
こころのヒダの、こまかいところまで理解して、
ひととの関係を具体的に言語化する名人だ。
こんかいのタイトルは、「年が年なもんで」。
理佐さんとヨシダさんとの結婚式(ふたりとも再婚)から
はなしがはじまっている。
ただ、すんなり「結婚式」とはよんでない。
親、兄弟だけの顔合わせ食事会を小さく開いたアレは、12年前だ。
この、「アレ」がうまい。
「お互い2回目なんで1」
「年が年なもんで!」
なので、すなおにおいわいできる おめでたい結婚式ではなく、
かといって、なにもひらかないのはなんなので、
あいまいに「アレ」と、ゴニョゴニョっとごまかすのが
再婚をいわう結婚式の ただしい位置づけだ。
親どおしのはなしあいにより、
お中元とお歳暮のやりとりはやめようと きまったそうだ。
理佐さんも、母の日と父の日、それに誕生日には、
「贈り物なし」で、電話するだけを提案し、了承されている。
たしかに、年8回もプレゼントをおくるのは、
かなりめんどくさそうだから、
理佐さんにとって 気がかりな問題だったにちがいない。
当日の朝に電話すると
「忘れずにエライ!」
と、ほめられ、夜だと
「おまちしてました」
と、笑われ、一週間まちがえたりすると
「早い・・・」「遅いネ」
なんていじけたフリをしてもうらうのだった。12年もやってると「型」っていうんですか?が、決まってきて、
「おとうさん(おかあさん)、元気でいてクダサイ」
「アリガトウ」
なんて、最近じゃ「ワザと棒読み」がウケるまでに仕上がってきた。
ことしの父の日、理佐さんが電話するのをわすれていたら、
むこうの家から、ヨシダさんを経由して、催促の連絡があった。
ヨシダさんは、
「リサちゃん、電話するの忘れてるってよ」
桐島、部活やめるってよ、の発音で。催促する、催促がくるまで、我ら一族は成長していた。二人の父に電話をした。父の日を忘れてなかった風で。心臓に毛が。ほら、年が年なもんで。
配偶者の家族とのつきあいは、
あんがいやっかいなものだ。
伊藤家とヨシダ家の親と子どもたちは、
いじけたフリをしたり、
「ワザと棒読み」をして、それがまたうけたりと、
12年のあいだに やわらかい関係をつくりあげている。
うわべだけの よそよそしいやりとりではなく、
なにかあっても いいほうに解釈して、
あたらしい家族の関係をたのしんでいる。
「年が年なもんで」と、いいわけしながら、
テキトーにやってる伊藤理佐さんは、すてきな大人だ。