スポーツをあつかう雑誌『スポーツ・グラフィック・ナンバー』誌に
1982年から1986年にかけて連載されたエッセイだ。
『ナンバー』誌から村上春樹さんのところに
アメリカの雑誌・新聞がおくられてきて、
その記事のなかから村上春樹さんが
おもしろいとおもったものをスクラップして原稿にまとめる、
というやり方ですすめられている。
おもしろかったのは映画作品『クージョ』について。
『ピープル』誌による批評が、
「この映画に比べれば、『鳥』なんかただの鳥の集会だし、
『ジョーズ』だってはた迷惑な魚の話にすぎない」
というからすごいもちあげかただ。
よんでいてついわらってしまったけど、
「『鳥』なんかただの鳥の集会」、といってしまえば、
たいていのものはありきたりの低俗作品としてカタがつく。
「『ジョーズ』にくらべれば『クージョ』なんて
病気の犬のはなしにすぎない」なんて。
このとらえかたをいかせるのは、
冷静さをとりもどしたいときだろう。
ついのぼせて悪徳商法なんかにひっかかりそうなときは、
深呼吸して「『ジョーズ』なんてはた迷惑な魚の話にすぎない」
ととなえれば、気もちをおちつかせる効果がありそうだ。
反対に、自分のことをこういうふうにポジティブなみかたをするのは、
たとえば仕事にむかうときなどは、絶対にやめたほうがいい。
かんちがいしなければ、やっていけないときがたしかにある。
村上さんは『クージョ』の原作について
「部分的には面白いのだけれど、
いかんせん長すぎて途中でだれてしまうところがあって、
キング・ファンの僕としてもちょっとしんどい」
と紹介している。
わたしにとっての『クージョ』は、
たしかはじめてのスティーブン=キングであり、
どんどんたたみかけてくるリアルな恐怖におどろいたものだ。
とても「病気の犬のはなし」なんていえないこわい世界だった。
『"THE SCRAP"』には「おまけ」として
ロスオリンピック期間中、村上さんがどう東京ですごしたか、
というエッセイと、
東京ディズニーランド見学についてのはなしがついている。
30年もまえの記事なので、村上春樹さんもさすがにわかい。
陸上トラックでゴルフの練習をはじめるおじさんとケンカしたり、
「I ♡原宿」と「好きです、北海道」のどちらが不快か、
とかんがえてみたり。
東京ディズニーランドについては意外にも好意的で、
「だいじょうぶです。面白いから」と紹介している。
「早寝早起きというせいもあって、
夜のデートはあまり好きではない。
九時ごろになるとついうとうとしてしまったりする。
うとうとついでに・・・・なんてことはあまりない」
なんて記述もある。
まだそれほど名前がうれてなくて
(『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
をかきあげた、というはなしがのっている)、
のんびりと東京でくらしている30代のハルキ青年は
けっこうたのしくやってたみたいだ。
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